再会の嵐


     

「お困りかな。そこの男前なお兄さん」


振り返ると、そこにはしばらくご無沙汰していた少年が立っていた。


「え――、チトセ?」


あまりに、あまりに予想外な人物の登場に目を丸くする。真っ先に話しかけてきたチトセが目に入ったが、その隣にはちゃんとラカールもいる。
あ、あの、意味わかんないんですけど。


「なんで、ここに?」

「なんでって、困ってると思って。元仲間、現在進行形で友達だろ、俺たち。手助けする理由はこれで十分」

「いや、なんでオレとルイトがここにいるって知ってんの? つか、どこに行くか分かってる? ラカールとチトセって駆け落ち中なんでしょ? 暇なの?」

「か、駆け落ちじゃないって!」


顔を真っ赤にして、ラカールはブンブンと首と手を振った。照れてる照れてる。満足げにチトセが頷いていた。


「お姫様かっわいー」

「うう、うっさいチトセ! もう!」

「そんなふうに言ったって顔が真っ赤だよー? あれ、耳も真っ赤じゃない?」

「お、おお、お黙りなさいチトセ!」


やばい。二人の世界に入り始めている。このバカップルが。ルイトもオレも冷めた目つきである。目の前で軽い痴話喧嘩をする二人にルイトがゴホンと咳をして割って入った。


「で? なんでここにいるんだ? ソラと俺がここにいるなんて、どこでそんな情報を」

「おおっと。そうだった。ツバサだよツバサ。ツバサの現状にはいろいろ驚かされたけど、ツバサから情報を買ったんだ。軽く現状の組織と暗殺部がどうなったのか聞いたら、ソラとルイトがどっか行ったっていうから調べてもらったんだ。んで、困ってるだろうなと思って。船ならそこに停めてあるぜ。礼ならいらないから安心してブルネー島に帰れよー」

「ナイスだよチトセ。ありがとう」

「ツ、ツバサ!?」


ツバサの名を聞いて真っ先にルイトが驚いた。チトセとラカールが容易に連絡を取った様子を見て驚くのは当然だ。諜報部では姿を眩ましたままなのだ。ボスの行方を気にするのは当然のことなのかもしれない。


「仕事の依頼なら受けるよ。俺」

「金は稼げるときに稼げないとな」


チトセとラカールとは違う別人の声。オレとルイトが声のした方をなんだなんだと向く。海に浮かんでいる小型の船に、ツバサと収集家が立っていた。
は?
意味わかんないナニコレ。なんでツバサがここに? なんでついこのあいだまで組織を主激してきた元ボスの一人がここに? てかなにあれ。ツバサの隣にいる黒髪のロン毛。収集家じゃない? 収集家って、あの収集家だよね。異能を収集する収集家だよね。収集家は収集家業務を放棄してるの? あれ、収集家って何回言ったっけ。収集家ってなんだっけ。ああ、やばい。ゲシュタルト崩壊……。


「ルイト。この状況はどう突っ込めば正解?」

「ああ、もう……、いっそ突っ込まずにスルーするのが正解だな……」

「ルイト、疲れてる?」

「最近な」


とつぜんラカールとチトセのみならずツバサと収集家が再登場するこの展開についていけないんですけど。