黄泉への道すがら


    

数日してから、オレとナイトは研究施設から出ていった。研究部を除く全てが事実上の解散となったのだ。ナイトは住み処のないオレに一緒に来ないかと誘ってきたがオレは断った。オレはこれから死ぬためにブルネー島へ行くのだ。

死に場所は全ての始まりだった故郷と決めている

同日にルイトも出ていく事となった。ルイトは学生で、学生寮があり、帰るのも場所があるにもかかわらす故意にオレに着いてきてくれるそうだ。


「わざわざありがとう」

「付き合うって決めたのは俺だ。気にするな」


レイカは当然、研究施設に残った。ジンは研究施設の警備員として働くとのことで試験中である。ジンも学生だが、学校の卒業は近い。就職先は決めておいて損はないだろう。

冬の暗い空の下、オレとルイトはバスに揺られながら駅へ向かっていた。大陸から島への移動時間は長い。朝方に研究施設を出たはずなのに時刻はすでに昼前だ。もうすぐ終点だとアナウンスがかかったが、それにしてもあの研究施設はどれだけ山奥にあったんだ。


「つーかお前、どこから金が出てくるんだよ」

「通帳から」

「そういうことは聞いてねーよ。ほら、更衣室の修理代。全額ソラが負担しただろ」

「まー、あっても仕方のない金だし。オレは生活費おもに食費にしか使わないから。命を扱う職業は給料が高額で良かったよ」

「貯め込んでそうだな」

「全部ルイトにあげるよ。ルイトなら上手く使えるでしょ」


オレの私物は基本的にまだ学生寮に放置してあるはずだ。オレたちが通っていた異能者の学校はツバサが経営している。オレは以前通っていて、今は退学したことになっているはずだが、まだ寮は片付けられていない。衣類や生活必需品は組織の建物に持ち込まれていたが、それ以外は寮に置きっぱなしである。

――懐かしいな。
ルイトたち、ハリーも含めてミントやシドレたちも通っていた学校。教師のナイトが居て、オレたちが生徒で。戻らぬ日々は記憶の底へ。
後戻りはしない。


「あ」


ブー、ブーと携帯電話が鳴る。機械の放つ光をあまり好まないオレの目は嫌々ながらもその画面を視界に入れた。着信している。……どうやらレイカから来ているようだ。


「もしもし。どうかした?」

『ソラ、今どこ?』

「え? バスだけど。ルイトも一緒だよ」

『ジ、ジンは? ジン、いない?』

「いないけど、まさかいないの? 今日って面接なんでしょ?」

『それが、い、いないの……。時間になっても来ないって、私の上司が』

「おかしいね。寝坊ってわけじゃなさそうだし。でも心当たりはないかな」

『……そっか。ごめんね。ありがとう』


電話の会話はルイトにも聞こえている。レイカがプツリと切ると、ルイトは携帯電話を取り出してジンに掛けてみるが、出ない。
こんな日もあるだろう。別に気にするほどのことではない。しかし、言い知れぬ不安が動脈を舐めた。

嫌な予感とは、よく当たるものだ。
オレは携帯電話に別の人物の番号を打ってみた。