結論の後


「……ジンとレイカには?」


泣き止んだ顔を袖でゴシゴシと拭い、真っ赤にしながらルイトは聞いてきた。ルイトに死ぬことを告白したが、それをジンとレイカや、他の人に話すのかどうか聞いているのだ。まあ、こんなことルイトに話したのが初めてだからな。


「いや、話さない。ジンとレイカならルイトみたいに反対すると思う。これ以上止められると決心が揺らいでしまいそうなんだ」

「そうか……。ソラ、怪我は大丈夫か?」

「平気」

「ごめん、俺の力不足で呪いを解くことが出来なくて」

「ルイトは居てくれるだけで支えになった。ありがとう。気に病む必要はないよ。ここまでオレを生かしてくれたんだから」


オレはルイトより先に立ち上がった。ルイトの手を引いて彼にも立たせると、改めて暴れた跡を眺める。
これは酷い。
オレとルイトの喧嘩で男子更衣室はまるでごみ箱の中であるような荒れようだった。ルイトの銃撃で壁は酷く抉れ、 ロッカーはなぎ倒されてるし、ボコボコに穴が開いてるし……。オレとルイトの喧嘩が解決して良かったのだが、これは一体どうしたら。この施設はリャク様のものだ。彼に謝れば許してくれるだろうか。彼もウノ様のように「はっはっはっ、若気の至りだな。元気があって結構結構。気にするな」と許してくれないだろうか。

そんなわけないだろバーカ。

リャク様は鬼畜だ。あの幼い姿に騙されてはいけない。以前、あのナナリーやサレンが食堂の柱に逆さで縛り付けられているのをみたことがある。リャク様の懲罰である。彼らが何をしたのか知らないが、三日間ずっと人目につく食堂の柱に縛り付けられるというのは精神的にも肉体的にも来るものがある。「これは下手に拷問するよりも羞恥心を煽って良い」と言っていたのは確かワールだった気がする。


「どうしよう、この惨状」

「素直に報告だな。でもリャク様は確か、今は集会中だったよな」

「……まじっすか。じゃあ、ナナリー? ああ、でも今のナナリーは」

「自分の異能の限界を超えて寝込んでるらしいな。しかも盲目になってしまったんだとか……」

「サレンに自白すればいいかな。まあ他の幹部のレスカーとかツユやらファルムでもいいと思うんだけど」

「とりあえず医務室で治療してから奴らが出勤するのを待つか」


ぶらりと更衣室を二人で出る。この研究施設には寮などない。山奥に研究者たちはいつも出勤してくるのだ。早朝では泊まり込んでいるオレとナイトの暗殺部。ルイトたち諜報部、ジンたち傭兵部などの生き残り、一部の研究部員だ。

一階の医務室へ向かうと、医務室のベッドで寝ていたレイカに遭遇した。
何が起きたのか追及されて困ったが、派手な喧嘩をしたのだと言えば納得してもらえた。ちょろい。
レイカに治療してもらい、出勤時刻になるまでしばらく医務室で休むことにしよう。