SSS


       

「考えなしに動き回るからこうなるんだっての。もっと計画性を持ってほしいね。ていうか、本当に意味わかんないから。これ、誰の奢りなわけ? 私は未成年だからあんま金ないし、マレみたいな素敵な女性にお金なんて払わせないでよね」


結局、街は企業ばかりが集う地区だったため居酒屋はあまり見付からず、24時間営業のファミリーレストランへ入店することとなった。
ばくばくもぐもぐとオムライスを頬張りながらエマは相変わらず悪い目付きの瞳でツバサとレヴィを往復した。
紅茶を飲むツバサとお茶をすするレヴィ、そして朝っぱらからパフェを食べるマレはエマの文句を静かに聞いていた。


「レヴィは無職みたいなもんだし、俺が払うよ」

「一番高いやつを追加注文してやる」

「どうぞ」

「む……」


これが大人の余裕か、とエマはスプーンをギリキリと噛んだ。レヴィは呼び出しボタンを押してウェイトレスを呼んだ。


「マレ、一番高いパフェ頼んで!」

「えぇ? 私はもう十分よ」

「あいつの財布を空っぽにしてやんの!」

「別にそんなことをしなくても……」

「あー、もー、ウェイトレスが来ちゃった! 私が頼んどくから!」


「がめついなあ」とツバサは苦笑する。ツバサの隣でレヴィが、レヴィの正面に座るエマがウェイトレスに呪文のようなオーダーをしている。マレはエマへほどほどにするよう言っているが、エマは注文に夢中だ。


「で。マレはソラを殺すの?」

「へ?」


それはエマにも問われた言葉だ。ツバサはマレをまっすぐ見ている。マレは目を丸くした。


「私……、そんなにソラを殺せないように見えるかしら」

「なに、俺の他にもこんなこと聞かれたの?」

「エマに」


マレはため息を溢した。パフェに乗せてあったさくらんぼを摘まんだ。ぼそっと短い詠唱をすると、さくらんぼはみるみるうちに朽ち果て、最終的にはチリとなった。


「できるわよ」


厳しい目付きだ。マレはチリになったさくらんぼを見る。ツバサはソファに背を預けながら「ふーん」と目を閉じた。いつも通り涼しい笑顔だ。


「お前ら、ウェイトレスの前で物騒な話すんなよ……」

「ああ、やっと注文終わったの? 強欲だねぇ」

「さすが収集家」


収集家のレヴィは「うっ」と言葉を詰まらせた。エマの呆れた声は皮肉を込めてハッキリとレヴィに伝わる。ウェイトレスはいつの間にかいなくなっていた。エマとレヴィの大量の注文を受けて厨房が慌ただしい。


「そんなに頼んで、食べられるの? 残すのは許さないわよ?」

「ほとんど頼んだのは収集家ですからっ」


マレの隣でエマはバシッとレヴィを指した。


「レヴィはどんだけ頼んだわけ?」

「全部」

「あ、ごめん。こいつの腹はブラックホールだから気にしないで」


ツバサもレヴィを指す。注文した最初の品が来るまでの間、マレはなぜツバサとレヴィか自分たちを誘ったのか思考を重ねたのだが、彼の笑顔からはなにも読み取れない。
どんな目的があるのか。先程の問いだけであるはずがない。紅茶を飲む彼に警戒をしたまま、マレはパフェを口にした。