SSS
「うる、せえ! オレはお前を殺すまで死なない! 死ね!」
激痛のせいか感覚という感覚が麻痺しだした。オレは魔女の呪いに意識をぶっ飛ばされそうになりながらも、死ぬことだけは断固断る。左目が妬けるように痛くなり、呪いは進行していく一方だ。こんなことではまともに武器を握られないし、魔女を殺すことだって出来やしない。意識がシャットアウトしそうなのを必死で抑え込んでいる程度の、この丸裸な状態で、オレは何ができる。
「……威勢だけはいいのね」
魔女が何を言っているのか、理解できない。何か喋っているのは分かるが、それが何なのか、呪いのせいかよく聞こえないのだ。
このままオレは死ぬのだろうか?
いいや死なない。こんなところで魔女に殺されてたまるか。オレがお前を殺すんだ。
右手で刀を強く握り、魔女を睨み付ける。魔女はなにも言わず無言で此方を眺めているだけだ。オレの後ろからラリスが嘲笑する。 魔女を絶対に殺してやる。
「オレは絶対に姉ちゃんを殺してやる」
魔女が怯んだ。痛みに堪え、その隙に膝を立たせる。殺意に任せた強い踏み込みで魔女の懐に入り込んだ。上半身と下半身を真っ二つにしてやる。
「っ『左腕は私の支配下にあり』!」
「くそが!」
両手で刀を持っていたが、突如左腕が言うことをきかなくなった。ガクンと何倍にも重くなった気がして、まっすぐ床に引っ張られている。しかし懐に入ってしまったあとでは、今度はこちらが攻撃される。左腕なんかにかまっていられない。そのまま右腕だけで刀を支え、魔女へ一閃。魔女はオレの動きが止まるという甘い考えのせいで回避が遅れた。服を破き、腹を斬った。しかしそれは内臓にギリギリ到達した程度でまだ浅い。 斬られた衝撃で下がった魔女を追いかけ、オレは魔女へ前進する。 魔女は腹を抑えて青ざめる。
「『急遽、 死属性の権限の下、マレ・レランスが命じる! 零へと還る我が力、死の本質、ここに』」
「唱えさせるかっつの」
詠唱を開始した魔女へ再び一閃。次は抜刀の構えだ。斜め上へ切り上げる。とっさに防御へまわした魔女の両腕が深く斬れた。こんなところで防御するなんてバカか。ここまで魔女に踏み込めばオレにも勝機はある。 殺せるかもしれない……! なんせ魔女は接近戦が苦手なのだ。接近戦がもっとも得意であるオレの勝ちである。
やっと魔女を殺せる!
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