SSS


 

「嘘でしょ……?!」

「げっ」



シャトナとレオの眼前に現れたのはレヴィだった。まるで空間転移をするように収集家レヴィが現れる。それが示唆するのはエテールの死。シャトナとレオの体から一斉に汗が吹き出し、心臓が死を予知していた。



「お前らがいると作戦が失敗する」

「……っ」

「シャトナ、防御だ! 俺が上に指示をあおぐ」

「わかったわ、レオ!」



シャトナ自身の影が実体化し、レオは同時に自身を透明化して姿を眩ませた。その様子を見ていたレヴィは彼らが戦闘体勢に入って驚いた。片手のひらをみせて、一時停止を要求する。



「まて、まて! なんでいきなり殺し合う?」

「だって、あなた今、私たちが邪魔って言ったじゃない」

「だからって戦わなくてもいいだろ。話し合うとかさ……」

「残念でした。私たち暗殺者に話し合いなんて求めないで。馬鹿の集まりなんだから」

「だがお前らは弱い。死ぬぞ」

「あら。案外いい男なのね。……でも、尊敬する人が死んで、生きる意味をなくし、死に場所をさがしていたのはエテールだけじゃないのよ。一石二鳥じゃない。ここで少しでもあなたを足止めして時間稼ぎができると同時に、私たちは死に場所を得られるのだから」

「どいつもこいつも命を粗末にし過ぎだろ! なんなんだ、この組織は! 命を無駄に散らせと習ったのか?」

「……ちが」

「別に俺はツバサやティアみたいに好戦的じゃない。話し合いが望める場合と、欲しい異能がない場合は殺そうとわない」

「何よ、敵のくせに」

「これはお前たちのためだ」

「っ襲撃をしておいて、よくそんなことが言えるわね!? エテールを殺したじゃない!」

「彼とは話し合いをする間もなかった」



レヴィのさらりと流れる黒髪がゆれ、首を振った。シャトナの戦闘体勢に変化はない。レヴィは防御膜を展開しつつ、戦闘を拒む。その真意は、やはりシャトナとレオを殺すことに利益を感じないことに他ならない。
レオがナイトに連絡を繋げている間、シャトナはずっと、レヴィと対峙していた。





――――――――





「よし、この部屋の重要機材はこれで十分。ソラ、ジン、ありがとう」



レイカは額の汗を拭いながら微笑む。あとは連絡して、空属性の魔術師に荷物を転移してもらえばいい。廊下を覗くと、リカの魔術が解けはじめているのか、真っ暗ではなくなっていた。



「次の部屋もあるんだろ?」



体を伸ばしながらジンがレイカに聞くと、レイカは頷いた。そのとき、レイカの眼帯がほどけ、床に落ちてしまった。レイカは驚き、オレが眼帯を拾って固まっていたレイカに手渡す。彼女はそれを受け取ると苦笑いを浮かべた。



「急いで部屋を出たから緩く着けちゃったのかな」

「……縁起が悪ぃな」

「ご、ごめんなさい……」

「別にレイカを責めてねえよ。謝るな」

「……ごめん」

「ジン、言い方がキツい」

「悪ぃ」



しゅん、とレイカは落ち込み、ジンは顔をそらした。レイカを元気付けて、ジンのところへ行くと彼はいつまでもバツが悪そうに頬をかいていた。



「……そういえば、シングとミルミの遺体がやっと墓に埋まったってよ。聞いたか?」

「初耳」

「墓参り、行こうな」

「……そうだね」



オレたちブルネー島の住民は墓参りには行かない。墓は黄泉の国と繋がっており、行けば戻れなくなるといわれているからだ。実際、オレが幼い頃、墓の近くで遊んでいた子供が神隠しに遭ったというのを耳にしたことがある。だからブルネー島の人が「墓参りに行く」と言ったときは死を意味する。
まあ、ジンはそこまで深い意味をもって言ったわけではないだろう。ただ、友に会いに行きたいのだろう。

レイカが連絡をつけて、部屋にあった荷物が次々と転移されている様子を確認し、隣の部屋に行こうとドアに手をかけようとしたら端末機が音をならしてオレに静止をかけた。画面をみるとルイトの名前がうつっている。一緒に画面を覗いたジンとレイカは首をかしげた。オレも疑問に思う。なにか連絡することがあるのか。緊急事態なのか。



「はい、もしも――」

『そこから出るな!!』



耳に当てなくても分かるほど大きな声で、そう告げられた。