SSS


 

「ハリーを返してください!」



ミントがハリーに近付かぬようシドレは徹底的な防衛を、魔女が上級魔術以上の魔術を使わないように連続した攻撃を仕掛けるワール。現状をずっと維持している。



「ミント、私たちは不利よ。空間が狭すぎるわ」

「でもハリーを目の前にして置いていくことなんてできません!置いていくくらいなら死にます! 私の大切な弟なんです!!」

「引くわよミント! っく、『失活、その左足をもらい受ける』!」



魔女の頬をワールの刀が通り過ぎ、血が飛び、髪の一部が切れた。すぐさま魔術がワールの左足の機能を奪い、立てなくなってしまう。ワールは転がり、さらに魔術をかけようとする魔女にシドレが重力を掛けた。呪文を唱えている最中だった魔女は呪文を横に掛けられ、壁へ落下。重力は重く、体重の何十倍もの重さがのし掛かり、彼女の骨は粉砕していく。



「心臓だけ潰して差し上げましょうか? 呼吸困難でも、内蔵の破裂で出血死するのも、痛みのあまりショック死するのも、今なら選べますよ」

「シドレさん!!」



冷たいシドレの声。ミントが空間転移をして魔女の助けに入ろうとし、それを投げたワールの剣が阻む。



「私は……、ブルネー島を殺したソラを、殺すまで、死なないわ! ッ『急遽! 死属性の権限の下、マレ・レランスが命じる! 零へと還る我が力、死の本質、ここに咲かせん! 触れられぬ彼岸を、哀しみに暮れるこの感情を、どうかこの手に――』」

「最上級魔術!?」

「どうやら砕く骨は顎のほうがよろしいようで――、!?」



シドレが魔術へさらに重力をかけようとしたが、眼前に小さな爆発が起こって能力を阻害された。ワールも、シドレも、ミントもその原因を見て驚いた。



「ありがとう、クラウンさん……!」



先程まで気を失っていたハリーが、胸を大きく上下に動かして、掠れた声をして、焦点の合わない目で、シドレを妨害した。
誰しもが予想もしていなかった。



「姉ちゃん、クラウンさんを別の場所に!」

「う、うん!」



シドレとワールが何をするよりも早くミントは詠唱を続ける魔女へ寄り、魔女を何処かに空間転移させてしまった。そうしたこでワールにかかっていた魔術が解ける。シドレが重力を器用に操作して先ほど投げたワールの武器を持ち主に返す。



「くそ、やってくれたな……」

「しかし脅威さえ去ってしまえばミントとハリーくらい殺せます」



シドレとワールが並ぶ。ハリーは段々と体力が回復しているようで、頼りない足で立ち上がった。その肩をミントが支える。ミントはポケットからライターを取り出してハリーに渡した。その指をライターに掛けるハリーに上着をかける。



「それにしても、まだ未知とはいえ……死属性には治癒魔術があったとはなぁ……」

「ええ……、予想外です」