殺し合い



ロビーに到着したとたん、シャトナの影に捕まった。レイカが悲鳴をあげるなか、オレはエレベーターに連行され、抵抗する間もなくあっという間に六階にある研究部の会議室に放り込まれた。レオに手渡された暗殺部のコートとガンホルターを装備しながら会議室を見渡すと、そこにはウノ様をはじめ、リャク様とカノン様たちが揃っていてオレは背筋を正して頭を下げた。



「ソラ、こっちよ」



声のした方にはナイトが手招きしていた。オレはこの状況がよくわからないままナイトに従う。

窓際に長い机が置かれ、そこには三つの椅子が設置されている。それとは対極の位置に同じ配置の机と椅子がある。窓際のほうにウノ様とナイトが。反対側にカノン様とエテールとシャラが座っていた。部屋の奥、その中央にはリャク様とナナリーが静かに座っている。オレはナイトにならって席につくと、彼女に短く事情を聞くことにした。



「おかえりなさい。ソラ。帰ってきてそうそうに悪いわね……」

「いや、それは別にいいけど……。これはどういう状況なの? オレ、ロビーに着いてからシャトナとレオに連れてこられただけでなにがなんなのかさっぱり……」

「ウノ様とカノン様が手っ取り早く殺し合うことにしたのよ」

「っは? え……あ……、そ、そう……」

「審判役にリャク様になって、いまからルール説明がされるところよ」

「審判……って、なにそれ。殺し合いに必要? 死んだら負け。生きてたら勝ち。ルールなんてないよ。どんなに卑怯な手を使っても相手を殺せばいいのが殺し合いなんじゃないの?」

「私だって変に思うけどそこまで知らないわ」



ナイトはどうしたらいいのかわからず迷っている。オレやナイトだけではなくシャラも落ち着きのない様子で、両手のパペットとヒソヒソと話をしていた。

リャク様が頷くと、ナナリーが立ち上がって「静かにしてください」と言う。ウノ様やカノン様は喋っていなかったので主にオレたちに向けて言ったものだった。



「前置きは省略しましょう。すでにご存知かと思いますが、ウノ様とカノン様が殺し合うことになりました。本来は許されないことですが、我々を仲介役におき、すべての条件を譲歩することで決行することにしました」



「条件はリャク様からお話ししますね」と言ってナナリーは座る。リャク様はふっと手をあおいだ。するとオレたちの目の前にそれぞれ緑色に発光する文字が空中に浮かび上がった。
「すごい……」とエテールが感嘆した。
確かにこれはすごい。ただの魔術として文字を浮かび上がらせているだけならばとくに感嘆とする部分はないのだが、リャク様は魔術を使用せず魔力を可視化させているのだ。ただでさえ魔力の可視化はできないだろうと言われているのに、この場にいる全員の、しかも器用に文字を可視化しているのだ。目の前の魔力を疑う。



「規約は簡単だ。オレの用意したフィールドに、それぞれが殺し合えばいい。復元能力と人形使いはカノンを守り、そしてウノを狙えばいい。粉砕能力とオリジナルは逆にウノを守り、カノンを狙う。ウノとカノンはそれぞれ殺し合う。それだけだ」