SSS
のびのびと両手、両足を延ばす。一時的とはいえ、動けなくなったため解放されて非常に清々しい気持ちでいっぱいだ。
「ソラどうせ上に用事があるんでしょう? 途中まで付き合うわ」
「シャトナ、それよりいまの異能って」
「収集家ね。うちの組織を無効化させるためのものでしょう。ソラは急いでナナリーの封術圏内に入るべきだわ。この階にいたひとたちは、魔術師に纏めて上に送ってもらったあとよ。まさかここにソラが残っていただなんて思っても見なかった」
「なんだ、オレは置いてかれたのか」
「やだわソラっ! 私がいるじゃないっ。愛してるわ! さあ、私に甘い包容を!」
「シャトナ気持ち悪い……」
本当に気持ち悪いよ……。 オレの冷めた視線にも気付かず、シャトナは身体をくねらせていたが、かける言葉がなく無視することにした。
「レオたちはまだ捕まった人たちを解放するんだよね?」
「そうだな。まだ収集家の通った一階と二階の救助が済んでないから。さきにこっち来たけどよ。あ、ソラ。エレベーターは使わない方がいい。止まったら大変だ」
「了解」
レオに話しかけると、レオはシャトナを差し置いて階段をのぼりはじめたのでオレもそのあとに続いた。後ろでシャトナが何か騒いでいるが、まあ、いつものことだ。 ――突如、背後で爆発が起こった。咄嗟にシャトナが周囲の影を集めて壁を作り、無傷でいられた。影の壁を解くと、そのさきには真っ白な白衣を黒く汚したエテールが本を片手に額の汗を拭き取って舌打ちをしていた。エテールは二階じゃなかったのか? 収集家が完全にエテールを圧していた。
「君たち!」
エテールは手元に、能力で本の失ったページを復元しながらオレたちの存在に気がついた。 煙が晴れ、三階の床には大きな穴が空き、その下には収集家らしい人影が見えている。オレは見えているがシャトナとレオには見えないようで、さっきから目を凝らしていた。
「シャトナとレオは急いで救助を進めて! 収集家の猛攻を抑えきれない。誰かリャク様に催促を」
「わかったわエテール。そのことは任せて。それよりあなたは大丈夫なの?」
「三階に誰もいないなら三十分はここで抑えられる。でも倒すことはできない!」
「そのままリャク様に伝える。他に何かある?」
緊迫する。 シャトナとレオは四階の救助があるため、伝達はオレが担おう。
「収集家は力を温存してるってことかな。こいつ、ここを壊滅させる気がある。僕もこの軽傷の状態をずっと保てる自信がない。収集家は強い。僕は切り捨てていいから、早く避難を!」
「了解。健闘を」
「ありがとう!」
オレたちは直ぐに四階にかけ上る。後ろを振り向くと、三階から四階へ繋がっている階段が、そこだけ電気が通っていないかのように真っ暗な闇に染め上げられた。エテールの仕業だろう。これまいわゆる結界魔術のようなものだ。 四階につくとオレは拳銃を手に握り、シャトナたちとはここで別れ、オレはそのまま階段をかけ上り始めた。
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