SSS



「ハリーを助けるわ」



魔女――マレがその決断をするには悩む時間など必要なかった。
シングとミルミを殺すという目的は完遂したものの、仲間であるハリーを連れ去られてしまった。数少ない仲間の一人。大切な仲間の一人が。



「でも私たちだけであの組織に乗り込むのは……」



エマの言いたいことはマレにもよく分かる。たった数人では返り討ちに合ってしまう。
――マレたちはまだ組織の戦力が激減したことを知らない。しかし、激減したとしても組織にはまだリャク・ウィリディアスという、魔術師の頂点といっても過言ではない人物が鎮座しているため、結局、どうしようもできなかった。しかしマレやエマたちにはハリーを見棄てるという選択肢は存在しない。どうにかして彼を救出できないかと、急かす気持ちを抑えながら考えに撤する。
侵入することは可能なのだ。こちらは侵入の問題を解決できる手段というものがある。だが、侵入してから一体何分持ちこたえることができるだろうか。



「ハリーは恐らく拷問されている。吐けば生きて帰して貰うことはできるかもしれない。でもハリーにそこまで辛い思いをさせたくないわ。一刻も早く……」

「……どうすれば……」



結論は出ない。時刻はすでに真夜中。寝ることもままならない。あと数時間で日が昇る。
窓の外から遠くにある組織の建物を睨みながらエマは歯軋りをした。悔しかった。目的地は目の前。それなのになにもできない無力な力に。



「二人とも、聞いてください! 吉報です!!」



そこへ騒がしく部屋に声が響き渡る。声主は興奮しているようで、いつも以上に声が大きい。



「組織内に、今なら侵入可能です! 収集家が組織を襲撃してるんですっ!!」



吉報だった。
収集家ほどの異能者が襲撃しているのなら、組織内は大混乱のはずだ。ならば、その混乱に乗じてマレたちがハリーを救出しても被害は最小限に抑えられるはず。

エマはマレに期待した眼差しを送る。マレは頷いてそれに答えた。



「今からハリーを助けにいくわ。ただし、私たちの目的はハリーを救出することのみ。いいわね?」



エマは深く首を縦にふった、