その後の処置



カノン・レザネードの魂は納まる肉体がなく、そのまま消失したとのことだった。ウノ様が魂だけでも存在できたのは驚異的な能力に寄るものが大きかったらしい。この戦いの結果は、ウノ様とカノンによる相討ちという結果におさまった。ウノ様、カノン、シャラの死によってこの戦いは幕を下ろした。

その後の処理は大変で、カノンがいなくなった傭兵部は一時的にボス補佐のエテールが纏めたものの、最終的には半分以上の構成員が組織を脱退した。傭兵部はたったの20人弱におさまり明らかな激減となった。大方の傭兵部は脱退し、そのせいでしばらくの間、組織内は忙しない状況が続いた。エテールも組織を辞めようとしたが、ナナリーの説得によってなんとか踏みとどまった。今は「傭兵部」と名乗るのではなく「特別警備隊」としてこの組織の建物の守りに徹している。
一方、同じくボスを失ったオレたち暗殺部は、記録上は解散という処置をとった。実質、オレたちは組織を辞めるということはせず、そのまま研究部に吸収されることとなった。諜報部も未だにボス不在ということで、ボスが健在の研究部に任されることになったのだ。



「白衣なんて着ないわよ、私たち」

「別に白衣を着ろとは言ってませんけどねぇ」



研究部に移籍した初日。オレとナイトとシャトナとレオの四人は揃って夕食を食べるために食堂に来ていた。オレがオムライスの乗っていた皿でタワーを作っていると、横から影を揺らしてシャトナは隣席のサレンと話をし出した。



「ソラに白は似合わないわ。私はエロい女医さんっぽくなってしまうしね」

「ソラはこっちで学生の頃、白いブレザーを羽織ってただろ。それにシャトナはそろそろ露出が過激な服は控えろよ」

「レオ、空気を読んで」

「だから白衣を着ろとは言ってませんよ、私たち」



サレンは面倒くさそうに銀縁の眼鏡を指で持ち上げる。シャトナとレオの二人と会話をするためにわざわざ仕事をしていた手を休めている。



「ソラ、そろそろオムライスを食べるの止めなさい。食堂の米がなくなってしまうわ」

「まだ腹がいっぱいになってない」

「これで30皿は越えてるのよ……」



ナイトがため息をついた。なぜここでため息。なぜ目をそらす。なぜ呆れている。コップを手に取って水を飲み干し、オレはナイトとシャトナとレオの空元気に耳を傾けた。
空元気すら必要としない、平然としたオレとはまったく対極にいる。左腕の袖を捲ってみれば相変わらず真っ黒な呪いがこちらを覗いてきた。