午前0時過ぎ
 
 

「高蔵寺? ああ、あいつなら先ほど出ていったぞ」



金神は当たり前のように言ってのけた。

高蔵寺の家に到着するなり、高蔵寺をさがした九条たちだが、高蔵寺は家のどこにもいなかった。居間で寛いでいた金神に伺ってみれば、先のセリフが返ってきたのだった。



「な、どうして高蔵寺を止めなかったの?」

「止める理由などあるか。止めろと指示もされなかったしな」

「赤神ちゃんたちを仲間にしに行ったんだから、次は高蔵寺ちゃんって分かるでしょう? 引き留めて置いてよ。だからあなたは金神なのよ。いつか人々に忘れられて消滅するわよ」

「なんだ、心配してるのか? 妖怪ごときにされるなどヘドがでる。止めろ」

「心配なんてしてないわよ。知名度のある雪女が優越感から言ってるのよ」

「妖が優越感だと? 神にか? 自惚れるな。所詮、貴様は妖に過ぎない」



ピリピリと金神と雪女が睨み合う。
そんな二人のことなど一切気にすることなく、九条は高蔵寺の部屋がある二階へ足を進めた。九条の後ろには赤神と高橋とロルフがついていた。
一応ノックをして確認をした後、襖を開けた。

やはり、中に誰もいなかった。書き置きもない。九条は静かにため息を吐く。



「高蔵寺……どこに……」



ロルフがうつむく。彼女がいなければいつまでもこの一日は繰り返され、止まない。明日か来ない。



「ねえ九条。高蔵寺って制服着てるんでしょ?」

「いつも着てるからそうだろ」

「学校に行ったんじゃないの?」

「はあ? そんなまさか」



そんな単純なわけないだろうと九条が言おうとした。しかし先に高橋がロルフに確認すると、ロルフは恐ろしいほど敏感な嗅覚で高蔵寺の匂いが学校のある方向から匂うと言った。九条は開けた口をとじた。
高蔵寺を呼び戻すために学校へ行かねばならない。学校が終わると高蔵寺がどこにいくのかわからないため、今、高蔵寺を迎えにいくしかない。



「九条、学校へ行って高蔵寺を連れて帰りましょう」

「……めんどくせ」

「学校の制服を着ているのは九条だけです。諦めてください。さて、それでは一階に戻ってこのことを話し合いましょう」



高橋が先頭になって一階に戻る。居間ではまだ口喧嘩をする金神と雪女がおり、その脇ではダンがテレビを見ていた。



「はいはい、注目! 高蔵寺は学校にいることが分かりましたー。なのでいまから高蔵寺を連れ戻しに行きましょー!」