Come Back
 


「俺はお前らと仲良しごっこをするつもりはない。そもそも家の中に化け物がいるっていう時点で身の危険を感じてる。日付が変わったんならさっさと帰れ。Come Back!」



いい加減に我慢ができないと言わんばかりにダンは吐き捨てた。
それは九条たちがいつまでもいるからで、ダンが九条たちの仲間に加わったわけではないのだと再確認させられる言葉だった。



「Aber Sie haben auch den gleichen Zweck。どうして……そんなことを言う?」



ロルフは左右を狼に挟まれながらソファーの上で首を傾げた。ギロリとダンに睨まれるとふいっとそっぽを向いて見なかったことにする。

時刻は午前3時だ。
案外来ない眠気に首をかしげたくなる九条は相変わらず面倒くさそうな顔をしている。実際にそう思っているため、あえて会話に加わらないで傍観することに徹底した。



「ちょっとあんたら、英語とかドイツ語とか止めてよ。ここは日本なんだから日本語使えって」

「俺は帰れといったんだ。もう俺の家には用はないだろうが」

「ダンは……、このループから脱け出したいと、思わないの?」

「それに関してはお前たちと同じ意見だが、手を組むとは言っていない」

「同じなら、一緒にいたほうが効率がいい……」

「俺はお前たちを疑ってるんだっつってんだよ馬鹿犬」



「犬じゃない……」とロルフは呟いた。入れ違いになるように赤神がダンに話しかけた。爛々と赤く光る眼光がダンを貫く。



「でもあたしたちは疑ってないんでしょ」

「それはそうだな。でも本当にそうか? この中の誰かが犯人かもしれないという気持ちには変わりはない」

「こういうのあたしが言うのもあれなんだけど、疑うなら近くにいて証拠をつかんだ方が手っ取り早いと思うんだけど」

「へえ?」

「あたしとしてはこの町のなかを自由に動き回れるやつらが固まっていてくれた方が対策を練られると思ってるんだけどさ」



いつの間にダンを仲間に加える話になったんだか、と九条は眼鏡のレンズを拭いた。そういえば眼鏡がなくても周りがはっきりみえる。眼鏡に度が入っていてもいつも通り見えていた。吸血鬼の視力というのはどうなっているんだろう、と一人別の考えをしている。



「とにかく帰れ。勧誘ならこのループの原因を見つけてからにしろ」