高橋救出作戦
 

金神の隣にいるダンは不機嫌を隠そうともせず、金神の意見に反対する様子を見せていた。そんなことなど一切構わず、金神は自分の意見を述べる。



「俺もお前たちの集団に加えてはくれないか?」



単刀直入だった。ダンはさらに苛立ちを体で表現し、九条は面倒くさそうに高蔵寺に流した。高蔵寺もぽかんとしている。



「と、唐突過ぎますわ……。つい先程まで敵だったではありませんの」

「しかし一目見て意見が変わった」

「……マイペースですのね」

「俺を仲間に加える気はないか?」

「私は来るもの拒まずの主義ですのでかまいませんけど……」



高蔵寺はロルフの顔にかかった髪を払いながら言う。辻をはじめ高橋と赤神も高蔵寺に意見を任せているようで、なにも言う気配はない。困ったように高蔵寺は九条に視線を送った。それに気がついた九条はいつもの調子で自分の意見を述べた。



「仲間になるってことは高蔵寺んとこに居候するんだろ?」

「それは初耳ですわよ」

「家主のお前が決めるなら俺は従う」

「部屋はあるので構いませんが……。まあ、いいでしょう。疫病神を招き入れてどうなるのかわかりませんわよ」



満足げに金神は笑った。
ダンは荒いため息を吐いた。ダンは明るさまにイライラしている。

金神に邪魔をされてはいるがいまだに戦闘中だということは忘れてはいけない。赤神と九条が警戒した。ダンがメモを一枚破り、床に押し当てると床がみるみるうちに修復されていった。宙を浮遊していた銀も一ヶ所に集まり、ダンの周りをくるくると自転するように回る。



「白けた。さっさと帰れ」



パタンとメモ帳を閉じてダンはしっしと手を払う。それ以降、ダンは部屋のソファに座ってテレビを見はじめた。



「金神がこっちについたから拗ねてんの? あれ」

「さあ。しかし単純に興味を失ったようにも見えますね」

「よく分かんないな。まああたしは目的達成で嬉しいんですけどね!」



赤神が抱きつこうとして高橋はひょいっと避けてしまう。高橋は知らぬ間にロルフと幽霊の少女が仲間になっていることに多少驚いたが、それよりも驚くべきことがあった。

九条が人間ではなくなったということだ。
色々と問い詰めたいことはあったが、それよりもロルフをどうすべきか考える。



「病院に運んだほうがいいのかな……」

「辻のその意見もいいと思いますわ。しかし彼は人間ではないし、病院は無限ループ側ですのよ」

「では高蔵寺の家まで運びますか? 目立ってしまいますけれど」

「……安静に運べるかどうかの問題もあるけどな」

「だったらこの狭苦しい家に明日まで居座れば良かろう」



金神が当たり前のように言う。それがいいと赤神も賛成しかけたところで、話を聞いていたダンはテレビのリモコンを金神に投げた。金神にあたった衝撃でテレビが静かになった。



「ふざけるな。帰れ!」

「俺を住まわせてくれたではないか。一人や二人くらい構わんだろう」

「あれはお前が勝手に住み着いたんだろうが! それに一人や二人のレベルじゃないぞ」

「神にりもこんを投げるなどなんたる無礼……」

「反応が遅い。……ちなみに、俺は無神論派だ。家はキリスト教だったがな。少なくとも神は一人だ」



高蔵寺がふむ、と考えながらロルフの頭を撫でていると、突然迷いのない目が赤神のほうへ向いた。赤神は「な、なに……?」と警戒する。