高橋救出作戦・問
 


「たっ、高橋さぁーん!」



金神の手のひらにのせられた鼠をみて赤神が飛び付こうとしたが、鼠は赤神を避けて高蔵寺の後ろに行くと高橋の姿に戻った。赤神が高橋に引っ付こうとしている。高蔵寺と辻はロルフの様子を見ていて、九条は一人で自分の尖った爪を見て目を丸くする。そんな彼らの傍でダンは金神を睨み付けて怒鳴った。



「なぜ奴等を逃がした!? 殺すことはお前も賛成しただろうが!」

「ああ、俺もした。だがな、彼らを見て確信した。殺したところで解決はできないとな」

「意味わかんねえぞ」

「これは術ではない。現象を引き起こす力だ。止めるにはただ殺すだけでは不可能。または現象を止める力を使役してもらうために説得するしかないな」

「何を馬鹿な……」

「馬鹿だと思いたければ思えばよい」

「お前は答えを知っているのか?」

「たった今知った。だが教えるつもりはない。自分で導きだしなさい」



金神は九条のもとへ寄ると、彼の頭をくしゃくしゃに撫でた。眼鏡がずれてポカンとする九条を鼻で笑って、微笑んだ。それは父のような感覚をもたらす。懐かしいその感覚に、九条はどこか荒れていた感情が落ち着いた気がする。



「自ら鬼になるとはな。しかし守るために身を捨てる行為、俺は好きだ。まあ、褒められたことではないが」

「……はあ」

「ん? お前にはよく不幸が降りかかるみたいだな。特殊なものだ。お前の姉ほど酷くはないが……、気付いているか?」

「え……、いや、は? 意味がわからん。なんで姉のこと……」

「俺を誰だと思っている。人間の不幸が好きな神よ」



金神は次にロルフの傍に行った。ロルフには高蔵寺と辻が近くにいて、彼自身はまだ目を覚まさない。
金神は高蔵寺を見て「なぜ介抱する?」と聞いた。高蔵寺は凛とした態度を一貫させて答える。



「死んでほしくないからですわ」

「今のこの世界ならば、死んでも明日にはまた生き返るぞ?」

「ええ、そうですわね。しかし私はロルフに死んで欲しくないのですわ」

「ほう。では最後に一つ。お前は幸せか?」

「さあ?」



金神は次に高橋へ質問を飛ばす。誰も金神を止めず、彼は好き勝手に歩いていく。ダンがため息をついて頭をかきむしっていた。



「先程は悪かったな。しかし不幸は美味だった」

「あまり嬉しくないですね」

「そうしょげるな」

「しょげてませんけどね」

「そこの鬼がいるからか?」

「っは、……はい?」



高橋が焦って、「Pourquoi!?」と言う。赤神はきょとんとしたあと一瞬おくれて「フランス語ですか?! かっこいいですね!」とやたら誉めちぎっていた。
満足した様で金神はダンの隣に行くと「さて」と腕を組んだ。