人狼加入作戦
 

あまりにロルフがあっさりとうなずいたせいで九条はあまり彼を信用できないと思った。そんな九条の心情を知っていてか、高蔵寺はクスクスと上品に笑いながら近づいた。



「ロルフはもともと空腹でしたわ。私たはちに襲い掛かったのも、空腹を満たすのが目的ですわ。その問題さえ解決してしまえばもう怖くはありませんわよ」

「そういうもんか……?」

「犬は従順ですわ。なにかあっても赤神が何とかしてくれるでしょう」

「……その赤神が……」

「え?」



九条が指を指す先には赤神とロルフがいた。
食事を終えたロルフは赤神に顔を近付けて「血の、においがする」と良いながら首を傾げている。主観によってそれは赤神がロルフに抱きつかれているようにも羽交い締めにされているようにも見える。
「高橋さぁーん、たすけてー」とここにいない人物の名を苦しそうな声で赤神は言うが無視されている。辻にも。
辻は人狼のロルフを怖れて耳を塞ぎ、聞こえないフリだ。



「高橋さぁーん……」

「赤神、そいつに高橋のこと調べさせろよ」

「九条ぉー! 助けろよ! 従属にするぞゴラー!」

「そいつ、じゃない。……ロルフ」



九条は赤神とロルフの注文を「めんどくさい」と返事をしてそっぽを向いた。
赤神の目が燃えるように赤く染め上がる。



「あ、あの、ロルフさん……見つけたい人がいるらしいから、捜すの手伝ってくれないかな?」



九条の代わりに辻が声を震わせながらロルフに話しかけた。ロルフは顔を上げてじっと辻を凝視しており、辻は高蔵寺に助けを求める眼差しを送った。高蔵寺は微笑して手を振るだけだった。



「においが、しない……?」

「私、もう死んでるのっ。だから、その、捜すのを……」



辻が勇気を振り絞って話をする様子を見ている赤神は「え? あたしって見捨てられてるの? え?」と困惑している。



「高橋って、もしかして……は、はく、はく……? ……あの白い服を着てた……?」

「白衣な」

「あいつのにおい、好きじゃなかったから、よく覚えてる……」



ロルフはゆっくりゆっくり日本語を話す。途中で九条が日本語を教えてやりつつも話を終えたロルフはやっと赤神を解放した。二匹の狼の頭を撫でてやりながら「今から行く?」と全員に聞いてみる。



「今から高橋さんを助けに行くに決まってんじゃん!」

「私は明日にすべきだと思いますわ。日替わりに行動をするのは控えたほうがいいと思いますわ」

「高蔵寺に同意」

「……私はお任せで」



九条と高蔵寺は赤神から盛大なるブーイングを受けた。