人狼加入作戦
「……はらへった」
二匹の狼とともに深夜のろのろとロルフがあらわれた。鼻をクンクンと動かしては辺りをキョロキョロて見渡し、また一人と二匹で歩きだす。ふと、とある一点を見つめて立ち止まった。ロルフはクマのある目を眠そうに擦りながら首をひねった。二匹から甘えた声がでてロルフに寄り添う。
「ああ、うん。そうだな……」
二匹と話をするように頭を撫でてロルフは少し考え込んだ。
その様子を遠くの建物の屋根から九条、高蔵寺、赤神、辻が見ていた。あまりに遠くて肉眼でロルフの様子を確認できるのは赤神だけで、他の三人はただ静かにしていた。
「やっぱりスーパーで買った牛肉には釣られないのかしら」
「今からでも辻を犠牲にして赤神がロルフを確保する作戦を決行すべきだ」
「ひっ!?」
「辻は死んでますわ。魂を人狼が食べようとするのは考えにくいですわよ」
「牛肉にはあたしの貴重な血を垂らしてあるから大丈夫だよ。それより辻がかわいそうじゃん」
辻により立案されたロルフを一時的に仲間にする作戦を決行されていた。作戦内容は簡単で、スーパーで売っている肉で釣り、肉の前にあらわれたら高蔵寺が説得することになっている。殴る蹴るなどの行動はロルフに敵意を生むため、穏便な作戦となった。
ロルフが二匹を連れて牛肉の方向へ歩いていく。それにあわせて四人も牛肉の近くへ行くことになった。 やがで牛肉の近くに四人は身を潜め、ロルフと二匹は牛肉を発見した。道端に置かれた牛肉をおかしいと思わないのかロルフたちはお腹を鳴らして牛肉に寄せられていく。が、牛肉とロルフたちの間に高蔵寺が立ち塞がった。赤神は高蔵寺になにがあってもすぐに動ける体勢だ。
「こんばんは、狼さん」
「……肉」
「私を食べてはいけませんわよ。でも、あの肉を食べるなら構いませんわ」
「邪魔」
「ただし、食べるには条件がありますわ」
「? なんでお前なんかに、そんなこと……」
「あの肉を買ったのも用意したのも私ですわ 」
「……」
「条件はただひとつ。私たちの仲間になりなさい」
「肉、買ってくれるなら……。いいよ」
「ええ、肉の準備は私に任せなさいな」
案外あっさりロルフは仲間になった。とたんに赤神は笑顔で道端に飛び出てロルフが仲間になったことによろこんだ。そのあとにゆっくり九条と辻が姿をあらわした。
「よっしゃー、犬が仲間になった!」
「簡単に信用してもいいのか?」
「なぁーに言ってんの! 犬は従順なんだよー?」
「……あっそ」
「犬じゃない……、俺はロルフ」
二匹の狼と生の牛肉を食べていたロルフは自分の名前を訂正すると再び食事に戻った。
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