プロローグ
 

九条は悪夢をみて、深夜に目を覚ました。何の夢をみたのか覚えていないが、まるでシャワーを浴びたような汗が、ただの夢じゃなかったことを物語っていた。
九条は起き上がり、ベッドを降りると汗を流すために部屋を出ようとした。そのとき、部屋の壁に掛けてあるデジタル時計に目をうつす。午前四時すこし前。九条はそれだけを見て、再び部屋から出ようとして動きを止めた。
見間違えたのかと、もう一度時計を見る。今度は机の上に置いていた眼鏡をかけた。

見間違えたわけではなかった。日付が変わっていないのだ。壊れたのかと思ったが、これは一週間前に買ったばかり。壊れただとは考えにくい。電池もそうだ。


「……明るくなったら電気屋でも行ってみるか……。面倒だな」



九条そのまま部屋を出た。

これは繰り返される一日。彼らは、彼女らは身をもって言葉の重さを知ることになる。