Opening is begun.

 


青い青い空の下、若い男女は様々な表情を浮かべながら歩いていた。同じ制服を身に付ける彼らはどこか居心地の悪そうにしている様子がある。
桜が咲き、散りゆく4月。彼らは高校の新入生だ。真新しくなれない制服は居心地の悪いもの。教科書が詰まった重たい鞄を持ち、それで快晴に負けないくらい笑顔を作っていた。



「友達100人できるかなっ?」

「おい、それ誰に言ってるんだよ朝比奈」

「私は別に勇汰に向かっていってないぞ? 可愛い女の子はいないかな。あ、ちゃんと凛も愛でるからそんなに拗ねないでくれよ! な!」

「我、拗ねてないよ! むしろこっち来んな!」



眼鏡をつけ、横髪をのこし短髪に切った女好きの少女は朝比奈。朝比奈の声に反応したのは勇汰。話しかけられたのは凛。反応した勇汰は初日であるのにさっそく制服を着崩し、アクセサリーをつけ、その上髪を染めている不良少年だ。中学では朝比奈たちが話し掛けない限り一匹狼の恥ずかしがり屋。凛は黒い髪を二つのお団子にしてぱっつんにした前髪を時々気にしながら朝比奈に反抗する。幼い頃から格闘技を習い続ける少女で各大会に出れば優勝トロフィーを持って帰ってくる背のひくい少女。
わいわいと騒ぐ彼らとは関係ないと言わんばかりにすぐ後ろには二人の少年がついていた。
まだまだ成長期の少年、姫小松と他称爽やかイケメンの五十嵐。

姫小松は五十嵐を見上げながら、ふっと笑みをうがべて話しかける。



「五十嵐、『俺は関係ないよ』って顔して風を気持ち良さそうに受けないでくれる? イケメン過ぎて腹が立つ。つい手が滑って殺しちゃうくらい」

「ははは、俺はイケメンじゃないよ。それにそんな顔してたかな。俺は学校楽しみだなって思ってるだけだよ」

「ほら、勇汰が拗ねてる」

「勇汰、両手に花だね」

「そういう話をしてるんじゃないってば。この天然」



姫小松がため息を吐きながら目線を前を歩く三人と横にいるイケメンから離して反対側の歩道を見た。
それは偶々であり、偶然であり、ある意味では必然である。人に言わせれば運命と答える人もいるだろう。

姫小松は反対側の歩道を歩く一人の少女に目を奪われた。

近くにある桜並木の花びらが春のやわらかな風にのって少女のあるく歩道を華やかに飾った。風の形をキラキラと輝く髪が描き、スラッとした体型と優しそうな整った可愛らしい顔が、彼女のすべてが姫小松の一瞬をすべて奪った。