The dream of a former incarnation

 


「前世って信じてる?」



入学して一週間がたった。姫小松と林王は席が近いということもあり、林王が話しかけやすいということもあり、二人の仲は出会った当初より親しくなっていた。姫小松を経由に勇汰たちも林王と一緒に昼御飯や帰宅するなかでもあった。
まだまだ親しくなりそうななか、昼食をいち早く食べた朝比奈は林王の左手を大事に優しく両手で包みながらキリッとした表情でまた繰り返す。



「林王ちゃんは前世って信じてる?」

「……へ?」

「私、運命を感じるんだよ。ほら、見えない赤い糸……見えない?」

「ん、んー……」

「私には見えるよ。きっと前世では恋人同士だったんだ。だから私た――」

「阿呆お!!」

「っバーカ!」



2つの手が朝比奈の頭を直撃した。朝比奈の潰れたような声がして林王は驚き、すぐに苦笑いをした。



「朝比奈も懲りないよね……」



姫小松がため息を吐けば彼の隣でパンを食べている五十嵐はひきつった笑みで笑った。しかし顔のパーツが整っている五十嵐はどんな表情をしても様になる。姫小松は舌打ちをした。「口を裂いてやりたい」と小さく呟いていたが、聞こえた者はいない。

林王を朝比奈から守った凛と勇汰は朝比奈にガミガミと文句を言っていた。



「阿呆お!! 林王ちゃん困ってたでしょーが!!」

「はははっ。凛、やきもちー?」

「ぬわぁんでヤキモチやかないといけないんだよ! 理由がないね! 思い込みだね!! 被害妄想!!」

「ひどい! そこまで言わなくったって。それはそうと、真剣な話、前世ってあるとおもう?」

「え、あれって真剣な話だったのかよ」

「おい相棒、冗談はよせよ……」

「黙れ女好き」

「女の子好きだ! 何が悪い!?」



朝比奈に絡んでいた凛は途中から諦めて五十嵐の隣で大人しく昼食を続行。相棒、と勇汰のことを読んだ朝比奈はゴホンと咳払いをしてまた「前世」の話に戻した。



「私、小さい頃からおなじ設定の夢を見るんだよ。勇汰と中学の頃にその夢の話で共感したんだけど」

「勇汰もおなじ夢を繰り返してるの?」

「ああ」



ふうん、と姫小松は林王に目をうつした。林王をみるたびに胸騒ぎがするのだ。理由がわからない。朝比奈の「前世」という言葉に、つい手首を見てしまった。重たい枷を現実のような感覚で感じることが、最近よくあった。林王と出会ってから毎日のように感じ、体のどこかが痛くなる。
おなじ夢。姫小松にも経験はあった。
もしかして、それが前世の記憶だとでも言い出すのか、と姫小松は無意識に手首を擦った。