質素な別れ



「唯一の私の仲間!」

「唯一の俺の仲間!」



ガシッと暑苦しくシャトナとチトセは抱き合った。ラカールがムッと膨れてしまう。仕方がないのでラカールの後ろからオレが抱き付いた。チトセもたまにはラカールに焼きもちを焼けばいいのにね、と耳打ちをして。



「暑苦しいぞ、そこの男好きと女好き」



レオがバリバリと二人を離す。
オレがラカールを全力で口説いていると、今度はチトセがオレたちを離した。おお、容赦ない。



「はっはっはっは、楽しそうだなあ」

「お茶を持ってきたわ」



ウノ様がナイトを連れて、もしくはその逆で二人会話に加わる。
ここはウノ様の書斎だから二人がいるのは当たり前だが、ナイトはついさきほどまで飲み物をとりに行っていた。



「あ、いいよいいよナイト。私たちはもう行くから」

「もう行くの?」

「うん、今日は辞表を出しに来ただけだし」

「そう……」



またシャトナの頭が項垂れた。レオは背中を軽く叩いて元気をだせ、と言う。
それにラカールとチトセも寂しそうに眉を下げた。



「シャトナ、寂しいのは私たちも一緒。あんまりみんなと喋ってるとズルズル引き伸ばしちゃうでしょ」

「俺たちのケジメだ。シャトナがそんな風に悲しがる必要はないんたからさ」



二人してシャトナを励ます。レオも励ましているので三人がかりだ。ナイトが苦笑を溢す隣でウノ様も泣き声を言っている。二人もブルーになると大騒ぎになってしまうのは予測できたことで、今日もそれは起きた。まあウノ様の泣き声はふざけているのが大半なので問題はないが、シャトナはどんよりしている。気持ちは分かるが、情けない姿を別れ際に見せると後味が悪いじゃんか。こころに思っていただけのはずなのに、それは口に出ていた。



「私のソラがそういうなら私は頑張るわ!」

「別にオレはシャトナのものじゃないんですけど」

「ありがとうソラ! 元気が出たわ」

「それはそれはなにより。でもオレの話をちゃんと聞けよ」



立ち上がって元気よくシャトナはラカールとチトセにさよならのハグをした。切り替えが早い。ウノ様はぱふぱふと拍手喝采を送る。レオはもう知らんぷりだ。オレもレオの真似をした。



「これ以上名残惜しくなる前に私たちはもう行くね。今までありがとうございました」

「またな」



目尻の赤いラカールの顔をチトセが隠してしまった。そのまま廊下へ出ていく。
なんだか別れが呆気なかったような気もするが、これくらいがちょうどいいのかもしれない。



「さて、全員に知らせたいことがある」



ウノ様はいつになく珍しく真面目な声音だった。トーンの低くなった声にレオが肩を揺すった。