彼女に死の宣告




「まるで他人事のように言うのね」



まただ。たまに聞こえてくる。オレが殺したはずのラリスの声……。

――え?



「あなたは一体何人を殺してきたのかしら? 目の前の女の子と比じゃないわよね」



殺したはず? ……ラリス?



「――ラ、ソラ、ソラ!!」

「っ!?」



地面を眺めながらあの声の正体について考えていると、ふとオレの名前を呼ぶ声がしてはっと我に帰った。
周りを見ていなかったのだろうか。目の前には肩を揺すっていただろうルイトがいて、少し離れたところにはシドレとワールがいる。ワールは気を失ったハリーを抱えている。シドレとワールは一緒にいた。
つい先ほどとは場所がまるで違う。ルイトが到着していたことにも気がつかなかっただなんて、どれだけオレはラリスの声に耳をかたむけていたのだろう。



「ふふ。ソラさん考え事ですか? 悩み事があるなら無理をしないでくださいね。 私たちはハリーを連れて今から本部に戻ります。レールが復旧していないので大変ですが……。では私たちはお先に失礼します」

「じゃあな、気を付けろよ」



シドレとワールは別れの挨拶をしたあと電灯の点っていないくらい路地裏に姿を眩ました。オレは無言で一礼して、ルイトは返事をしていた。
それから静かな空気が流れるかと思いきや、ルイトは未だにオレの肩を掴んだままその手に力を込めた。痛い痛いと訴えても、その返事はさらに力を加えられるのみ。言葉つうじてるのかな、この人。



「い、急いでシングたちの所へ行こう!! ミルミが……!」

「え? な、なに……、うわっ!?」



顔面蒼白のルイトは叫ぶようにして言った。オレの肩を掴んでいた手はするりと腕を滑って左手を掴んだ。こちらも痛い。しかしそんな文句や冗談をいっていられる雰囲気でないかなくとくらいはオレにも分かる。夜の闇のせいで視界が曖昧で不安になってしまうのと同じ感覚だ。胸が奇妙に揺るれて苦しい。一体どうしたというのだろう。



「ルイト――」

「ミルミが死んだ」

「……――は?」



唐突すぎる。
ちょっと待って。整理できない。あのミルミが? シングのことばかり考えていそうな背の低い少女。ミルミ・ベファルン。彼女が死んだ?

ルイトは誰かが死んだなんて冗談は口にしない人物なのは知っているのだが 、あまりに急激なことで冗談だと思ってしまう。



「エマ、覚えてるか?」

「クソ魔女のとなりにいつもいるセーラー服の子でしょ。流血操作の」

「あいつに殺られた。魔女の超遠距離魔術も加わっていたように見える。血で陣を描いて、エマとの共同で、上級魔術らしい」

「エマを媒介に?」

「……だろうな。心臓の音は確かに一つ消えた。シング、ラカール、チトセ、エマの声はするから」



ルイトがヘッドフォンを外していたこと今気が付いた。今更だった。
ルイトは耳が良いから聞こえるのだろう。鮮明に、現実の音が。
ちらりと除き見るようにルイトを見ると、一瞬だけ一筋のしずくがみえた。オレは遠い場所の現実は見えない。けれど目の前の現実ならルイトに負けないくらい確かにみえる。



「ルイト、泣くのは後で。ミルミが死んだらシングが危ない」

「わかってる!」