饒舌なソラ



「うわあ、情けない声」

「いやいやいや、ソラ! おかしいだろ!」

「ああ。考え直せ、ソラ。深呼吸して、冷静に。な? いくらソラが男の恰好をしているからってお前、実際は15歳の女の子だろう」



珍しい。ルイトが焦るのは予測済みだが、シングまで止めに入るとは。レイカも慌てているが何も言えないでいるし、ミルミはまったく動じていないものの目線は外だ。ジンなんてむしろもっとやれ、みたいな視線を送ってくる。まあ、年ごろだしね。



「いや、そういう意味じゃないよ」

「そういう意味だったら困るわ」

「だよね」

「『だよね』じゃねーよ! 教育上よろしくねえってことだ!」

「ねえ、それって教育上よろしくないことが起こるの? ルイトってそういう意味でオレのこと見てたの? 親友だと思ってたのはオレだけ?」

「そういうことじゃなくて……!」

「友達なら別にいいじゃん。お泊り会みたいで楽しいと思うよ」

「そんな楽観的な……」

「そもそも。暗殺者を奇襲できるとでも思わないでよね。いままでオレが息を殺して影から何人を墓に送ったと思ってんの? ルイトなんかに奇襲されるほどのんきな人生は送ってるつもりないんだけど」

「ぐ……」



ルイトはこれで食い下がった。シングもなにも言えなくなったようで、ミルミに「ソラを止める方法はないか?」と話題を振っている。それに対してミルミは「そうですね……」と真剣にシングと頭を悩ませている。そんななか、珍しくレイカが意見を述べた。内気なレイカが意見を述べるとは意外だ。
膝の上で畳んでいた手をテーブルに乗せ、レイカは控えめに、しかしいつもよりハッキリとした言葉をもって言った。



「だめだよ。いくら親友でも、やっぱりルイトは男の子だし、力だってソラよりルイトのほうが……。もしものことがあったら誰も助けてくれないのかもしれないよ?」

「レイカが心配してくれるのは嬉しいし、意味もちゃんと分かるけど大丈夫だよ」

「でも」

「大丈夫だって。ついこの間まで一般人だった16歳の少年ひとりに組み敷かれるほどウノ様の部下は弱くない。それともレイカはオレが頼りなくでひ弱で軟弱って言いたいの? 今回ルイトを助け出したのは他でもないオレだよ」



「俺もだっての」と文句言いたげにジンは頬を膨らませたが無視。
いつもより饒舌になりながら彼らを説得する。そのなかでシングはなにかに気が付いたのかコロリと意見を変えてオレを支持した。戸惑ってオレと意見するレイカを交互に見るミルミ。ルイトは溜息。結果としてオレは見事にルイトと同室になる権利を勝ち得た。

そのあとオレたちは揃って夕食をいただき、各自部屋にもどった。さて。ここからが本題だ。部屋にもどって風呂の準備をしようと脱衣所まで行くルイトの背中を目で追いながらオレはずっと腰につけていたガンホルターを取った。