いざ




ナイトに連れていかれてソラはリャクが魔術を展開しているという場所へ案内された。場所は研究部のエリアかとソラは思っていたがその予想は裏切られて、連れていかれたのは会議室。研究部の会議室だが、意外な場所でソラは「なんで会議室」と呟いた。



「ソラ、私はここまでよ。なかにリャク様がいると思うからしっかり挨拶しておくのよ。いいわね?」

「了解」

「あと武器はちゃんと持ってるわよね。弾は補充した?短剣はもった?キャリーバッグは?向こうについたら男装をとくのよ?お友だちがびっくりするだろうから……」

「……あのさ、ナイト」



ソラの両肩をに手をおいて真剣なまなざしをするナイトの口からは、ここに到着するまでに何度も確認したことだ。
あきれ気味にソラはナイトを自分から離す。



「大丈夫だから。何回も確認したじゃん」

「そ、そうよね。ソラも成長したものね」



組織内で着用していた上着を脱いでソラはナイトに渡すと「じゃあね」と手を振った。ナイトは私服姿になったソラを見送った。



「失礼します」



ソラがそう言って入り、リャクと予測はしていたがやはりいたナナリーに挨拶をした。
部屋にあったであろう机や椅子は端に寄せられており、中央には魔術陣が描かれていた。

陣はゆっくりと回転し、場の空気を張る。冷たい空気が足元を流れ、ソラは一瞬たじろいでしまった。
カーテンをしめきり、電気をつけていない会議室では魔法陣が放つ光だけが頼りで、うすぐらい世界を描き出す。まるでここだけが世界と孤立したようで、息を詰まらせた。



「来たか、オリジナル」



腕を組んでいたリャクはソラへ振り返り、部屋の隅の暗い部分へ目を向ける。



「はーい、出発しますよー!」



リャクのかわりにナナリーが他の人物へ声をかけた。ソラは他にもいるのか、と能力を使ってその暗い部分をみると「なんでいるの」とそちら――より詳しく言うなら五人いるうちの一人――を睨んだ。



「いや、ソラだけだと……なあ?」

「どういう意味」



ルイトだ。他にもシング、ミルミ、ジン、レイカが発見された。



「レイカを媒介にしてオリジナルたちの場所や状況を把握する。他はおまけだ」



腕組みを解きながらリャクは人さし指を陣へ向けた。喋る気がないリャクの代わりにナナリーが微笑みながら通訳をする。



「さあ、陣の内側に入ってください」