外れたレール




アレンがシングに端を留められた小さな紙束を渡した。その紙束をパラパラ捲り、シングは話を始める。



「列車が停止した原因は公開されていないが、父の部下が調べたところ、レールが外れたのが原因らしい。普及には召喚師を使うらしいから三日程度で直るだろう。そして、これが面白いことにその召喚師がチトセらしいぞ」

「え、チトセ……?」

「つーかレールが外れるってなんなんだよ」



ルイトはレールを気にしていたが、オレはチトセの方が気になる。なぜチトセがここにいるんだ。たしか、ここ数日は非番だからラカールといちゃいちゃしてると思ってたんだけど。あ、もしかしてこの街に入って最初に聞いたナンパしてる声……まさかチトセ?



「チトセはラカールと共に里帰りをしているらしい。二人とミルミは俺の家から近いからな」

「へえ、帰省したんだ。いちゃいちゃしてるんだとばかり思ってた」

「そしてレールの方だが……、なんというか、外れたんだ。綺麗にな。脇道に抜き取られたように」



テーブルにメモをのせた。みんなに見えるように。写真が印刷されたそれに映されていたのは、途中からレールの途切れた線路だ。そのすぐ隣には外されたレールが置かれている。



「どうしてこんなことをしたんだろう……」



レイカの意見に賛成だ。こんなことをした意味がわからない。レールをごっそり取り除いて、横に置くなんて。



「なんか空間系の異能でやったみたいだな。誰かを足止めしたいのかぁ?」

「空間転移とか空間歪曲かな。なら能力者か魔術師の仕業か。まあ、ここで考えたって仕方がないよ。今は組織の本部に帰還することが最重要なんだから。こんな悪戯の犯人なんて捜してる場合じゃない」

「そうですね。ソラの言う通りです。裏社会の中で長く生きているソラの判断が正しいと思います」

「そうだな」



珍しく頭の冴えたジンの考えに同意するが、それよりも仕事の達成が最優先事項だ。
ミルミとシングの同意もあり、列車の話は一旦ここで終わった。



「今後の予定だが、まあ、この家の中ならどこへでも動き回っていいが、常識の範囲内で頼む。別館には近付かないように。では簡単に案内をするからついてきてほしい。ついでに宿泊部屋も案内しよう」

「へ、部屋、足りる……かな?」

「大丈夫だレイカ。部屋ならいくらでも余っている。わかっていると思うが、男女二名ずつに別れてもら――」

「オレ、ルイトと一緒がいい」

「へえっ!?」