アフィマ都市




「君、可愛いね。こんな街中で世界にたった一人しかいない君と俺が出逢えたのは奇跡だ。そう思わない? よかったら少しお茶しない? きっと何かの縁だと――」



駅から出ると、すぐにバス停へ急ぐ人と私鉄へ向かう人の軍団に別れた。だがオレたちは、そのどちらにも行かず、街の中へ歩いていくことになった。その道中、聞き覚えのある声がしたのだが、振り向いてもその人は見えなかった。



「急だけど大丈夫なのか?」

「ああ、大丈夫だ。心配することはない」



ヘッドフォンの調子を整えながらルイトはシングにきき、シングは微笑を浮かべて答えた。

アフィマ都市とは、異能者と無能者の共存がなされている発展国の商業に特化した都市らしい。オレたちの組織の本部が構える都市も人で栄えているのだが、アフィマ都市はそれを越える。この都市の端の端にシングの実家があるそうだ。ミルミの実家もすぐ近くだということも聞いた。



「マスター、迎えが来る地点は……。見えてきましたね」



ミルミが携帯電話の画面から目を離し、見た目線の先、均等に均された道路の先には、高級車が二台……。……高級車……。



「え」

「お、おい、ソラ」

「ちょ、引っ付かないでよジン! 君は力加減ができないから痛いんだって!!」

「わ、わり! そんなことより良眼能力なら他人の目線の先、分かるだろ? ミルミが見てるのってまさか、あの高級車か!」

「……らしいね」

「まじかよぉぉお」



ジンは落ち着きが無く、シング本人に確認していた。オレに聞かないで初めからそうしていればいいのに。

そうやってため息をつくと、レイカが「前にシングとミルミの家はいいとこだって言ってたのに……」と、ものすごく小さな声で呟いていた。またまた近くにいたオレと良聴能力のルイトだけ聞こえ、ルイトは「同感」と返事をした。

それから二台の高級車へオレ、シング、ミルミとルイト、ジン、レイカに分けられてそれぞれ乗り込んだ。中は広く見た目以上の面積がある。オレの部屋にあるどのソファーよりも柔らかい椅子に座らせられ、紅茶を薦められたが断っておいた。そうしたら差し出した使用人らしき男はクスリと笑う。



「さすがシング様のご友人ですね」

「あまり彼をからかわないでくれ、アレン」

「! 俺の名前を覚えておいでで? ……っありがたい!」



男は何か感激して、紅茶を淹れ直した。今度はオレの目の前で、一から。彼がコップに美味しそうな紅茶を淹れるまで、シングとミルミの二人とすこし雑談をした。



「アレンはすぐに感激する男なんだ。あまり気にしないで欲しい」

「へえ、個性的なんだね」

「ところでソラ、なぜあの紅茶を断ったのですか?」

「仕事柄、知らない人が知らぬ間に淹れた飲み物は飲まない主義でさ。それにしてもアレンって人、好い人なんだね。中に混ぜた毒が混ざりきっていなくて見えてたよ」

「はい、彼は大変良い方です。素直ですが初対面には睡眠薬で試すことが多くて……」

「……わあ、個性的」