別れてきた友達




「では本題へとうつろうか。はっはっはっ、ナイトなら隣の部屋にいるから心配する必要はないぞ。それとも緊張か?はっはっはっはっ、大丈夫だ。リラックスするといい」



温厚な声がソラにふりかかる。
ソラは緊張をしていた。ウノの言葉をありがたく思いながら深呼吸をして「大丈夫です」とつげる。



「ソラ、こちらの世界にはどうやって来たんだ?」

「……はい。不良に絡まれそうになったところをツバサに保護されて、それで意識を失ってしまいまして……」

「なるほど。やはり挨拶は済ませていないよな」

「?」



ソラの手のひらより一回り大きい人形の頭がうんうんとうなずく。何にウノが納得しているのかまったく分からないソラは不思議に思っていた。わずかに表情がかわる。



「紅茶を淹れてきたわ」



そんな凛とした女性の声がしてソラがそちらを向けばそこにはカップをソラの手前においているナイトがいた。

彼女はソラが所属している暗殺部のボス補佐。つまりウノの補佐である。また、表の職業は教師をしていて組織の建物にいるのは珍しいはずである。
もともと目付きは悪く、つり上がっているがべつに短気でも好戦的なわけでもない。



「挨拶ですか?」

「そうだ。ほら、むこうにも友達はいただろう?」

「いました、けど……。でももう会えないんですよね?時空を越える……ましてや別世界にとぶなんて」

「ソラ。それが可能なのよ」

「はい?」



ソラはウノの隣に座ったナイトに聞き直す。ナイトは「それが」と言って続きを話した。



「リャク様が魔術師だってことは知られてて、彼の属性が独自に開発したのが天だってことも知られているわ。けれど具体的などんな力をもった属性なのかってことは誰も知らないわ」

「……」

「以前ソラをこちらの世界へつれてくるための扉を開いたのはリャク様よ。リャク様の上級魔術。ふだんは最下級と下級魔術ばかり使ってるから本当に珍しいわね」

「あちらの世界にはまた行ける。
そこで、だ。あちらの世界でソラは行方不明だということになっていると思うんだ。友達は心配しているだろう」

「あ……」



ソラの脳裏には特に仲良くしていた後藤と雄平が浮かんでいた。

たしかに、あの日は後藤さんを送ったのを最後に姿を消している。後藤さんは泣いているかもしれない。雄平は泣くことはなくても……。なにも言わないで消えたから心配しているかもしれない。

すっとソラの目が細くなった。



「リャクに扉を開いてもらえるように頼んだ。挨拶してこい、ソラ」

「ですが」

「遠慮しなくてもいいんだぞ。たまには甘えなさい。ソラは私にとって大切な娘……いや、息子?なのだからな!はっはっはっ。私は頼りにされるのが嬉しい」

「ありがとうございます、ウノ様。……甘え、させてください」



ソラは深く頭をさげた。