救出作戦会議



ルイトが収容されている施設を確認したあと、その施設が見える飲食店に入った。そこで朝食をとりながらジンは処刑時間を教えてくれる。



「処刑は、人が一番集まる昼間にやるんだ。それまでにルイトを助けねえと……」



店内の時計を見れば、もうすぐで午前9時。あと三時間と考えた方がいいだろう。オレは朝食を口に詰め込みながら異能者の収容施設を見た。灰色のコンクリートで厚く覆われた壁は立体四角形の側面にしか見えない。あの箱の中で、ルイトはどうしているのだろうか。
オレがまだ沈青事件を起こして捕まっていたときと同じように撲られ続けているのかもしれない。



「あ、あの、私に考えがあるの……っ」



レイカから切り出すのは珍しい。オレたちはレイカに注目すると、彼女は身を縮み込ませた。シングとミルミがフォローする中、レイカは頷いた。ジンはレイカのおどおどした態度に怒りたかったようだが、ここはルイトのかわりにオレが宥める。取り合えずオレの守備範囲内にあったアイスクリームでもあげとけばいいだろう。さようなら、アイスクリーム。



「ソラは暗殺部の一員なんだよ。誰にも気付かれないで侵入してルイトを助けるのは得意分野なんじゃないかなって」

「ああ、そうだね」

「だからソラにルイトを助けてもらおうと思うの。私たちはバックアップで……どうかな?」

「レイカ、具体的にバックアップはなにをしたらいいんだ?」

「あ、うん。ジンとシングとミルミは囮役になって欲しいなって。裏と表の入り口で警備員を引き付けて欲しいの。私は施設のセキュリティに侵入してみんなを手伝うよ」

「んだよ、お前。そういうのできるのかよ。それっていつもルイトとか諜報部がやることじゃねえか」

「で、できるよっ。ナナリーとかサレンは専ら研究してるけど、私は機械類の開発班なんだよ。え、えっと、だから、私の得意分野、なの」



恥ずかしそうに顔を赤くしてレイカはどんどん縮んでいった。非戦闘員のレイカは、こんなことしかできないけど……、と呟く。



「なんだ、お前。案外すげえじゃん」

「……ぅえ?」

「もっと自信持ちゃいいじゃねえか。……っあ、と……、な、ソラ!」

「照れてるからってこっちに振らないでよ」



レイカを素直に褒めることがなかなかないせいか、ジンはオレの首に腕を巻いてなんとか赤面した顔を誤魔化そうとしてる。
にこにこ、とシングはジンの様子を見て、ミルミはもくもくと甘そうなパフェを頬張っていた。揃いにも揃ってこの二人は知らんぷりか。契約者って似ているんだろうか。