追いかけごっこ




「……っレイカ! それにソラたち……」



ジンは汗だくの真っ赤な顔を上げた。雪国はマイナス気温が当然というなか、ジンはとても暑そう。
オレはジンを確認するとすぐに周りの様子を見たが、静かだった。……どういうことなんだろう……。



「ジン、大丈夫!? え、えっと……水を今……っ」



レイカはジンの様子を見ると、タオル、水、毛布を持ってきた。風邪をひいてはいけないと、すぐに車の中へ連れていく。オレは車の屋根から降りるとため息をついた。その意味を悟ったシングとミルミは深刻な顔つきになる。

ジンは見付けたが、ルイトがいないのだ。



「まさか、ルイトはさっきの……」

「可能性はある。見失うと危険だ。俺とミルミは車を追いかけよう。俺ならば追跡ができる」

「わかった。じゃあ、頼んだからね」

「ああ」



シングの異能は瞬間移動。ミントの空間転移に似ているようで全く別物の異能だ。文字通り、彼の移動が瞬間的なのだ。一般の目には見えないほどのスピードを出すのは朝飯前らしい。理屈もなにもない。簡単に言ってしまえば速いのだ。だから車に追い付くことも追い抜くのも簡単にやってのけてしまう。

シングはミルミを持ち上げると、すぐに行ってしまった。
余談だが、ミルミは物凄く軽い。もしかしたら手の上にミルミを乗せられるんじゃないか、というくらい軽い。



「ソラ! ルイトが――!!」

「わかってる。レイカ、車を出して。シングたちが、主にシングが追っているから足跡を追ってくれる?」

「わ、わかった……!」



雪の煙があるのはそれがシングの走ったあと。オレが助手席に座って足跡を見てレイカが追う。車の後ろの席で、だいぶ落ち着いたジンが何があったのか、話はじめてくれた。



「あいつら、異能者を飼ってやがってた。探索系だ。恐らく召喚師。ルイトの耳にも気付かれないで探索して、近付いた」

「近付くって、どうやって? ルイトの耳ってほぼ絶対的じゃん。全方向広範囲の音なら聞き分けられる」

「ああ。でもルイトの耳を狂わせる術を奴らは持っていたんだ。あちこちにスピーカーを配置して一定に超音波を流しやがったんだよ。いや、超音波はおかしいか。聞こえてたし。とにかく嫌な音だった。それ流して耳を狂わせたんだよ」

「それで、どうなったの?」

「ルイトは自分が捕まって、俺を逃がした。ルイトを追い掛けてたんだけどよ、まあ、その道中にお前らがいたんだ」

「へえ……」



右だ、左だ、と会話の途中でレイカに指示を出しながらオレはジンの話を聞いていた。