直前、雪の上で足がスライド





「あーっと、つまり雪国が異能者を受け付けないのは宗教とか、そういう意味なの?」

「そうだな。宗教とあれば他の国は口出しできないし、国民は異能者を殺すことに疑問を感じないだろう。それが正しいことなんだと思っているんだからな」



レイカが運転する車の中、オレとシングは昨晩の話の続きをしていた。しかし、まあ、昨晩はシングが話を始めた直後にオレは爆睡。シングはため息。ミルミは暴力的にオレを起こそうとしたらしいが、レイカが泣きながら止めたんだとシングに翌朝聞いた。でも笑顔でシングのいうことだ。少し現実よりオーバーに語ったことだろう。

まだ車の側面についている窓は白く凍り漬けされたままで、そこに手を触れながらふうん、とオレは言う。



「異能者が暮らすのは発展国がダントツだな。俺たちが生まれたのも、組織が建っている場所も発展国だ。雪国の隣国だな」

「へー」

「ブルネー島も発展国に含まれるが、あの島は独立時代の意識が根強くて一応同じ国、といったようなものみたいだな」

「へー」

「魔術師の名家の地位が発展国に手出しさせなかったらしい」

「……へー」



どこか上の空で、オレはぼーっとしていた。シングは苦笑。そこでミルミが「ソラ、マスターの話は聞いていますか?」と鋭い口調で問うも、オレの返事は無し。

正直、勉強だと思うとシングの説明はやたら長く感じる。そして早朝の眠気がオレを襲う。



「あ、着いたよ」



レイカの覇気が全くない声がしてシングの授業は呆気なく終了を迎えた。

車から降りると、その瞬間、横を灰色のデコボコした車が一台通っていった。雪の上を滑らないのか、疑問になる。いや、むしろ滑っているからこそあんなに速いのかもしれない。やたら速い車だったなあ、と思っていると斜め下から「ソラ」と名前が呼ばれた。ミルミだ。



「あれは異能者を捕縛して搬送する車です。なにか見えましたか?」

「カーテンがかかっていて見えなかったけど……、まさかルイトとジンが……?」



タイミングとしてはちょうどいい。まさか、と嫌な予感が過った。
シングとレイカも不安げな顔をしている。四人で話し合った結果、少しだけ待つことになった。オレは車の屋根部分の上で立ち、高いところから周囲を見渡す。そしてふと、木々の間で見慣れた人影が視界に見えた。あの銀髪は、確か……。



「あ。……ジンを見つけた」