そして続く




ジンは驚いた。いままで治癒系統の異能者は見たことがなかった。だから驚いたのだが、同時にツバサが異能者だと認めることになった。

ツバサは二人を置いていた車に乗せると、二人を座らせるのではなくうずくまるように指示した。うずくまった二人の上に毛布をかけると「今から雪国を出て発展国へ行くからね。国を出るときに追われてる子供を連れているなんて知られたらまずいから、少しだけ我慢して」と言う。返事はなかった。

二人はついさきほど少女の死を感じたのだ。少なくともルイトは知っていた。崖の上から聞こえた心臓の音が、荒くなる呼吸の音が、音が、音が、消えたのだ。目の当たりにはしていないものの、たしかに理解していた。
ジンは実際、まだ半信半疑だ。ルイトの様子をみれば少女が死んでしまったんだと理解できる。それでも、直接的に感じたわけではない。

ぐすぐすと鼻をすするルイトの声だけが車内に響いた。










…………………………………………










「着いたよ」



車が停車した。その間、寝てしまっていた二人は目を覚ます。窓から外をみれば、五階もある横に長い建物が一番に視界に入り込んだ。地面は芝生。そして固い土。ツバサが車から降りて、二人も恐る恐る降りる。遠くに制服を着た学生の姿が見えた。

ここはどこだ、と聞かれればツバサは短く「学校」と予想外の返答をした。



「学校ぉ!?」

「そ。学校」

「な、なんで学校なんかに連れてこられたんだよ!? 」

「ここは異能者の専門学校。ルイトとジンはまだ異能者について知らないことだらけでしょ?」

「だから学校かよ……」

「衣食住は保証するよ」



有無を言わせずツバサは二人を案内した。

不満げな顔をするジンと、いまだにうつむいたままのルイト。その二人を男子寮の奥にある部屋に連れていき、あれやこれやとツバサは説明した。

ジンとルイトの逃亡劇はあっけなくツバサの手で幕をおろされ、あっけなく異能者と人間が共存する世界に飛び込むことになった。

ルイトは人の死に過剰になり、数年後、ソラが引き起こした深青事件を目の当たりにして記憶喪失になる。