一時的な休息




「寒いッ!!」

「ソラが叫ぶなんて珍しいな」

「そうですね。つい録音するのを忘れてしまいました」

「無理無理無理無理! 寒いって! 死ぬ!」



ありえない、とオレはレイカに抱き着いた。予想していた通り、レイカは暖かい。キーンと冷たい空気に放り込まれたオレたちは駅から出ると、真っ白な世界を目の当たりにした。首に巻いてあるマフラーを口元まで引っ張りながら、月を見上げてみた。吐き出される白い空気でよく月が見えないのだけれど。



「ソラ、行くぞ」



シングとミルミを先頭に、オレとレイカがあとに続いた。ひとまずホテルに向かうため、足跡を残しながら進んでいった。
雪国の人たちは雪のように白い肌を持っている。そういえばルイトもそうだった気がする。しょっちゅう外へ出るジンもわりと白かったような気がする。

そんなことより寒い。

いつの間にかホテルについたらしく、シングが受付に行った。オレはレイカに抱きついたまま。端からみれば男女がいちゃいちゃしているように見えるのか、ロビーにいる人が時々こちらを見ていた。



「ドアで仕切れるようにした部屋をひとつ。明日の朝までとりあえずは自由行動だな」

「え? 作戦とかいらないの?」

「車でルイトとジンを回収して汽車に乗るだけだから大丈夫だよ。いまのところ、二人は無事らしいし」

「そうなんだ」



レイカに頭を撫でられたがどうしていいのかわからず、その肩に顔を埋めることにした。それを見ていたミルミは「不純異性行為です」と言う。いい誤解だ。それにオレとレイカは同性。



「さて、どうせソラは部屋でぬくぬくしていたいだろう。部屋で勉強しようか」

「げ、勉強……?」

「世界のことだ。いわゆる社会科だな」

「……最悪……」



レイカから離れてシングを睨むと、彼はふいっとそっぽを向いてしまった。しかも口笛までしている。
ミルミはシングの手から部屋の鍵を抜き取ると、レイカの手を引いて早歩きで先を進んでいった。オレとシングもそのあとに続く。社会科の勉強をしながら。



「いまさらな気もするが、勉強をする暇がなかったのだから仕方がない。現代社会の勉強だ。まず、この世界には五つの国がある。ソラが直接的に関わることはないだろうが、まあ、念のためだ」

「はあ……」



まあ、たしかに思い出したのはほとんどが思い出というもので社会についての知識はあまり持ち合わせていない。ちょうどいいかもしれない、と大人しくシングの話を聴くことになった。