列車会議




「異能者だと殺されるから逃げてるんだ……。ルイトとジンは出身地だし、顔を覚えられてるわけだ」

「ああ。なんとか生きているみたいだが、寒さをしのぐ方が大変だろう」

「なるほど……」

「あ、で、でも、最近の雪国は異能者の受け入れもするようになったんだよ。まだ偏見とかはあるみたいだけど……」



オレはアイとレイカの話を聞いて頷いた。ルイトとジンが幼馴染みだということはなんとなく知っていたのだが、生まれた環境は知らない。制御装置としてのルイトのイヤホンを、ジンのアクセサリー。彼らが異能をいまだに上手くコントロール出来ないのはもしかしたら雪国に生まれたからかもしれない。異能者を弾圧して殺すような場所では異能を鍛えられない。



「都市部のほうだけだぞ、異能者の受け入れ姿勢を示してるのは。ルイトたちみたいな田舎はアイが言った通り、異能者は安心して暮らせない」

「……そうなんだ」

「ルイトたちを回収するとき気を付けろよ。せめて異能者だってバレないようにな。魔女を殺す前に死にたくねえだろ」



ワールは頬杖をついたままつり上がった目でこちらをみた。オレは頷いてシドレの話の続きを聞く。



「ルイトさんたちは方角を間違えることなく南下しています。一週間もすれば雪国から出られるでしょうが、国境の前にルイトさんたちが生まれ育った町があります。ソラさんとレイカさんには、ルイトさんたちの食料と防寒具を渡して帰ってきてください。ルイトさんたちが雪国に落ちてからもう何日も経っています。生存は確認していますが、2人だけでは長期戦になってしまいます」

「もしオレとレイカがルイトと一緒に凍死しかけたらどうするの?」

「シャトナさんとレオさんに迎えを頼みましょうか。あんな人たちに頼むのは癪ですけど」



……シドレってシャトナたちと仲が悪いの? 物凄く嫌そうな顔をしている。声のトーンも下がったし。レイカが怯えてる。



「ソラさんを信じていますよ。ああ、シングさんたちも忘れないでください」

「わすれてた。ごめん、シングとミルミ。そういえばシドレたちはなんで情報屋なんかの片付けに?」

「あの情報屋がうちの組織の方なんです。もう45歳になる高齢の方でした。おなじ組織の人なので、いろいろと……」

「ふうん」



オレたちは、シドレたちの降りる駅まで仕事に関する話や世間話をした。
今日でわかったのは、シドレが重度の変人だということだ。