移動中、車と汽車の中



運転するアイの横にオレが、レイカとシドレの間にワールが座った。ナビではなく、オレはアイからシドレがどれだけ変人なのか、という話題になっていた。



「まあ、結局のところ、どこにでも変人はいるってことだよな。うちにシドレがいるように、暗殺のところにはシャトナがいる」

「……ああ、シャトナね……。うん、たしかに変人だ。ていうか変態でしょ、あれ。どうにかならないかな……」



シャトナは、やたらオレに絡んでくる年上の女性だ。いつもレオと一緒に行動をしている。実は今日も、ロビーに行く前に鉢合わせをして散々絡まれた。

後ろでシドレが何か言っていたものの、ワールの怒りを含んだ声と、レイカの弱々しい声が混ざって何を言っているのかわからなかった。ワゴン車の中で騒いでいたらいつの間にか駅に着き、汽車に乗る。テーブルがついた席をとっておいたようで、5人でその席に座った。夜ということもあり、人は少ない。通勤通学ラッシュの時間でもないし、車内は静かだった。



「では、ルイトさんとジンさんの居場所について説明いたします。雪国まで、汽車で2時間。終点です。では地図を広げますね」



ついさきほどまでメモ帳――本人はネタ帳と言っていた――に物凄いスピードで興奮しながらペンを走らせていた人物とは対極に、落ち着いた様子でシドレは鞄の中から紙を取り出して広げた。ネタ帳に使っていたのと同じペンで、地図を指す。世界地図ではなく、雪国だけが描かれた地図だ。シドレはペンで円をいくつか描いた。



「アイがルイトさんたちの居場所を特定させました。では説明しますね。私たちの乗っている汽車は1時間ほどでシングさんとミルミさんがいる都市に到着します。ここで私たちは降り、ソラさんとレイカさんはシングさんたちと合流ですね」



完全記憶能力者であるレイカの本領発揮だ。なんとなくオレも聞いているのだが、普段から人の長い説明は眠くなってしまうこともあり、あまり頭に入ってこなかった。レイカはシドレの話を真剣に聞いて、時々質問をしたりする。さすが研究部。集中力や頭の良さ、理解力は高い。まあ、レイカの異能が完全記憶能力というのも関係するかもしれないけれど。



「俺がルイトたちを見たのはここだ」

「……ルイトたちは今なにをしてるの?」

「逃げてる」

「は?」



シドレの手からペンを抜き取って、アイは地図に丸をつけた。流れる窓の外を見ていたワールの目はアイの話に興味をもったのか、地図に視線を滑らせた。



「雪国が異能者にとって危ない場所だっていうのは知ってるよな?」

「ああ、うん。その雪国にルイトとジンが生まれたんでしょ?」

「そうだ。で、ルイトたちがちょうど帰ってきた場所が、逃亡するまで暮らしていた田舎町。雪国は異能者を発見すれば手段を選ばず、排除する」