午後6時



シドレたちとの話でオレとレイカは結局、彼女たちと一緒に行くことになった。リャク様も帰ってきて、夜に出発することに決めた。
泊まりにいくわけではないし、ましてや遊びにいくわけではないので荷物はあまりない。いつも通りの、シンプルな白いラインが入った紺色のコートを着ていく。雪国は寒いだろう。暑い島に生まれたオレは防寒をしっかりしておかないと死んでしまいそうだ。防寒具を身に付け、夕食の時間に部屋を出る。一階の受付があるロビーにて、他の人と待ち合わせだ。

一応、この組織の表面は会社だ。カモフラージュするのは諜報部と研究部。建物の三階までを学生寮として提供していることにして、そこから上は企業としているらしい。受付には美人の女性がいる。そういえば昨日、受付の女性をチトセが口説いててラカールに怒られていたのを目撃した。



「ソラ、ごめんね。待たせたみたいで……」



ソファに座って待っていようとしたとき、レイカが控えめの声でこちらに来た。どうやらいつもの白衣は着ていないようだ。かわりに防寒具を着用している。



「大丈夫だよ。オレも今ここに来たばかりなんだし。……それにしても雪国ってどのくらい寒いの?」

「ルイトたちは雪国の中でもまだ暖かいところみたいだけど……今は冬だから……、絶対にマイナスより低いかな?」

「オレ、マイナスの温度計なんて見たことないんだけど」

「え?」

「こんばんはー」



レイカが驚いて、オレを見上げた。
そこへ、シドレの登場だ。後ろにはアイとワールの姿も確認できる。三人とも、いつもの茶色の軍服は着ておらず、私服だ。シドレとワールはそれぞれ武器がはいる専用のバッグを肩にかけていた。



「駅までアイがワゴン車で安全に運転します」

「え? 運転できるの?」

「ええ、できますよ。ちなみに、勝手ではありますが助手席にはソラさんな座っていただきたいです! 容姿の髪と瞳が真逆で、異能は同じ眼に関するもの。そしてぶっきらぼうな顔など、個人的な萌え要素を含んだ同性――」

「オレ、別に男じゃないんだけど」

「つうか、お前が助手席に座れよ」

「それならばワール! あなたにはソラの隣に座っていただきたいです。私はバックミラーからあなたたちを……、いえ、私はレイカさんにこの道の素晴らしさを、そして道連れに!」

「え? わ、私?」

「ええ、そうです! レイカさん、考えたことはありませんか? ソラさんとルイトさんがくっついたらって! 男性同士! ここがポイントですよ」

「あ、あれ? ソラが女の子だって知ってるよね……?」

「なんのことでしょう?」

「ひっ。ご、ごめんなさい……!」

「詳細は歩きながら説明いたいます。あ、ソラさん。これ地図です。アイをナビしてください」

「……アナログなの? てか地図なくても行けるんじゃない?」

「いいえ。駄目なんです。二人が話をしなくては意味がないんですよ!」

「……はあ……」

「さあレイカさん。ふふふ」

「ひいぃぃぃ」