翻弄組




オレとアイが注目するなか、レイカが帰ってきた。思ったより早い。レイカはオレの隣に来て、はじめてシドレとワールの手合わせを視界に入れた。どちらかの攻撃が当たりそうになる度にソワソワと落ち着かない様子を見せる。



「早かったね、レイカ」



取り合えず話し掛けてレイカを落ち着かせてみようと思うのだが、眼帯に覆われていない目はオレとシドレたちを何度も往復している。



「うん、少し話をしただけだから。あ、それとね、リャク様が帰ってきたみたい。たぶんもうすぐで出発だよ。……準備はできてる?」

「昨日の夜と朝、散々ナイトに言われて準備したから大丈夫。まあ武器の整備がメインだったけどね」

「そっか。なら大丈夫だね」



レイカが微笑んだと同時、隣にいるアイが「まただ」と呟いた。視線のさきにいるシドレとワールを見ると、決着がついたようだった。
ワールの刀がシドレの槍に弾かれていた。その様子は誰がどうみてもシドレの勝ち。シドレは槍の切っ先をワールの首に向けたまま息を切らし、一言いった。



「ワールの負けです。負けを認めますか?」

「シドレの勝ちだ。負けを認める」



ワールが降参、と両手を顔の横に持っていけば、シドレは槍を下ろしてワールに手を差し出す。ワールはその手をとって立ち上がったあと、刀を拾って鞘におさめた。



「シドレが勝つのっていつものことなの?」

「僅差でいつもワールが負ける。体力はワールの方があるんだが、シドレのほうは異能のコントロールが完璧だ。異能の使い方が上手いからな」

「へえ」



確かにシドレは息切れをしているのにワールは息が一切乱れていない。



「ソラ、手合わせしねえか?」

「え、まだやるの?」

「俺はまだ余裕だしさ」



なんとワールから誘われてしまった。ついさっきシドレと手合わせしたばかりじゃん。まだ体力に余裕があるのか。なんてタフなんだ……。



「いや、ルイトとジンを回収しに雪国へ行かなくちゃいけないんだよ。連絡が入るまで待機してるとこ」

「そういえばそうでし……あ、もしかしてベリア鉄道に乗りますか?」



ベリ……え? 汽車かなにかの名前だと言う程度しかわからない。戸惑っているとレイカがシドレの話に返事をした。



「うん、そうだよ」

「奇遇ですね! 私たちはちょうど今夜その鉄道に乗るところなんです。シングさんとミルミさんの実家がある街をテリトリーにしている情報屋が亡くなってしまったので後処理に出張です。よかったら途中まで一緒にいきませんか?」

「ルイトとジンの居場所は大体特定できている。直ぐに見つかるはずだし、リャク様ならレイカの許可もはやいだろ」