お呼びだし




『黄金の血』が消えて、ツバサとミントが死んでから今日まで数週間経っていた。その間、ソラは戦闘訓練を積極的にする一方で人間関係の幅もいっきに広がった。記憶がなくなる以前の知り合いがソラのもとへ訪れ、また、ソラが訪れた。そのおかげでこの人物がどういう人間なのか、という具合はだいたい把握しつつあった。
ルイトは面倒見がいい方。ジンからの情報によれば年下から告白されているのを何度か見たという情報がある。ソラは意外だ、と思った。
シングはたまにふざける常識人。
ミルミはシング命。シングを守ることばかり考えている。
ジンは短気。よく怒る。そして壊す。ルイトが言うには、ジンはレイカが好きだという話を聞いていた。何事にもジンは不器用なんだ、と。
レイカは言わずもがな気弱。過半数はジンが脅すせいだろうとソラは細い目をしたことがある。
と、いう具合に互いに、というよりソラが相手のことを知っていく。ソラ自身の性格や好き嫌いも世界をとぶ前とかわらないようで、彼ら6人の関係は徐々に進展していくというより戻りつつあった。

そしてソラの数週間という時間をかけて再構成された人間関係と記憶は、ここでも発揮される。

ルイトの部屋に現れた黒髪と金髪の二人組はソラの記憶にしっかりと刻み付けられていた。
黒髪の人物はシャトナ。スキンシップが激しい女性だ。ソラもこの数週間で何度も被害にあっている。異能の関係か、シャトナの影のかたちは不安定だ。ゆらゆらといつも揺れていてシャトナのかたちをしていない。
隣にいる金髪の人間、この人の見た目はまるで少女だが、れっきとした男だ。名前はレオ。シャトナのストッパーだがやる気がないとかシャトナを無視することが多い。彼も異能の関係で不安定に体の所々が透明になることがある。

シャトナとレオが登場したときのソラの第一声が「げ」だったのはシャトナのせいだろう。



「ねえルイト。シャトナとレオは普通型?」

「そうだな」

「無視!?」

「ソラ、伝言だ」

「レオも無視するの!?」



レオがシャトナを無視してソラのところへ訪れた目的を話す。



「ウノ様が呼んでる。書斎まで連れていくから行くぞ」



いまにも暴れだしそうなシャトナの口を抑えてレオが言うとソラは頷いた。ルイトを見れば、彼は仕方ないとソラの退室を許可。



「おいジン、漕ぐな。目覚ませ」

「なんだよ……」

「解散だ、解散」



ソラが片付けをし、ルイトも片付ける。ジンはルイトに背中を叩かれて怒る。レイカも片付けをしているとき、彼女の携帯端末機器が鳴った。着信の知らせだ。レイカは首を傾げて画面を見れば目が丸く開かれた。急いで部屋の隅にいき、電話をとる。



「勉強道具持ってないからもう行けるよ」

「あらら。勉強道具を持っていないって、相変わらずね」



そのまま抱きつこうとするシャトナを避けてソラはルイトたちに手を振られて部屋からでた。



「あ……、私、リャク様に呼ばれたからもう行くね」



控え目にレイカは自分の荷物を持って小さくバイバイ、と手をふって急いで出ていった。