訓練場



「いたた……」

「自業自得でしょ」



チトセがあまりにもラカールに缶を投げられた頭が痛いというので手合せを中断して医務室へ行くことにした。訓練用の武器は借りているものだから元の場所に戻して見学していたラカールとレイカに事情を話す。



「自業自得よ」

「あはは……」



腕を組んでふん、と顔を逸らしたラカールにチトセが必死謝る様子もそこか見慣れており、オレはレイカの隣に立って二人が落ち着くのを待つことにした。しかしいくら経っても落ち着くことはなく、痴話喧嘩は止むことを知らない。もうこの二人を置いて食堂でレイカと何か食べようかな、と思った矢先。「あっ」とレイカが訓練場の入り口、つまりこの広い部屋のドアを見た。自動ドアであるそこが開いたのだ。もうオレたちは訓練が終わったのだから帰ろう、と思った。このさいラカールたちはおいて行っても構わないだろう。



「あ、ソラさんじゃないですか」

「よお」

「……なにしているんだ、こんなところで」



現れたのは、シドレ、アイ、ワールの三人組だった。
ツバサの部下である。いまはツバサが不在なのでリカとサクラの部下にあたる。この三人はいつも行動をともにしていて、バラバラに行動しているのは珍しいものなのだ。シドレの性格は一見清楚な少女だ。声も澄んでいて綺麗。この声を嫌うひとはいないだろう。彼女の歌声を聴いたことがないのだが、ぜひ一度拝聴してみたい。しかし彼女の趣味はとても……、独特というか、なんというか。よく自分の世界にはいってしまうというか。とにかく独特なのだ。そんなシドレの世話をやいているようなものなのがアイとワール。ワールはオレよりも身長が低いものの刀と剣の腕はたしか。どうして戦闘に特化しているワールが諜報部に所属しているのはわからない。一方、アイは非戦闘員らしい。異能が千里眼故にサングラスを普段からつけてその紅の目を隠している。まあ、ルイトのイヤホンのように異能を制御するためのものらしい。



「ソラとチトセの手合せが今終わったところだよ。えっと、アイはルイトたちの捜索をしているんじゃなかったっけ?」



だいぶ控えめにレイカが言う。レイカのすこし内気な性格ではなかなか話しかけないのだが、珍しい。



「雪国っていっても広いからな。千里眼に透視みたいな異能もついてるんだが……頭が疲れてな。気分転換に散歩していたところだ」

「ついでに少しだけ体を動かそうって思って。まあ、ラカールとチトセがいつもみたいに痴話喧嘩してるみたいだけど」

「ふふふ、ノーマルCPおいしいです、ぷまいれす……」

「悪い、シドレのことは気にしないでくれ」