雪国組




「……寒っ!」



後ろにいるジンが口にその言葉を発したお陰で、それを聞いていたルイトも身体がブルッとふるえた。
それもそうだろう、とルイトはどこか納得する。地図では一番北側の田舎に生まれたルイトとジンは、滅多に「寒い」とは言わなかった。田舎は都市部とは違い、暖房の設備は完全とは言えない。その結果もあり、ルイトとジンは滅多に「寒い」と腕を擦ることはなかった。
しかし今、二人は白い息を吐き、鼻と耳を真っ赤にしながら一面に広がる銀色の雪に足跡を残している。帰還し、その着地地点は組織の建物内部であるはずだったのにルイトとジンは二人そろって雪の中へ投げ出された。もしここに暑い南国生まれのソラがいるなら凍えて死んでしまうのではないかと思わせる。



「はあっ。どこを歩いても雪ばっか。森すら見えないってことは、ここは高原かなにかか?」

「んなこたぁ知らねえよ。つーか寝床探そうぜ。どうみてもソラたち見つからねえし」

「でも」

「レイカは頭がいいだろ、シングとミルミはどうせセットだろうし、二人とも生きる術は完璧だ。ソラなんか生きることにしがみついてっからなんとかなるだろ。いっつもコート着てるしよ」

「コート一枚じゃ寒いだろ……」

「雪は止んでるし、空みろよ。あっちの方晴れてんじゃねえかよ。大丈夫だ」

「……、寝床、さっきみつけた洞窟でいいか?」

「見付けてたのかよ」

「俺の耳をなんだと思ってるんだ」

「悪ぃ、お前の異能の凄さは俺が一番知ってたわ」



ルイトのあとにジンが着いていく。ルイトの足は迷うことがなく真っ直ぐすすんでおり、ジンも彼を信頼しているようで、とくに不安を見せることなく、むしろただ白銀のみの雪景色を眺めていた。



「あ? つーかよ、なんで高原に洞窟があるんだよ?」

「気付くのが遅い」

「るせえ」

「あそこに入ったら俺の考えてること、てか思ってること話す」

「おう」



そのときルイトがイヤホンを外した。ルイトがイヤホンを外すのはとても小さな音を聴くときか、遠くからの音を聴くときのみ。ジンはとくにつっこみを入れず、見え始めた洞窟に視界の中央にとらえた。
しんしん、とその時雪が綿のようにゆっくり落ちてくる。ジンはいつ晴れるんだ、と一面灰色になってしまった空を真っ直ぐ見上げた。