間違い探し




ルイトたちを探そうと、波打ち際から離れて島の奥に踏み入れた。住宅街は綺麗な形で残っていなかった。焼かれて無くなった家の跡や、ところどころにしつこくこびりついた血。乱暴に壊されたドアや家具。どれもこれもが、真っ赤に燃え盛るそれらを連想させた。
最後にここを見たときは炎にのまれるところだ。全部が炎に吸い込まれる。家だけじゃなく、生き物も。

オレは人の気配を感じなかったため、先に進むことにした。壊れた教会、学校、遊具が錆びた公園。記憶の中の情景と似ている。すべてが、五年前の事件から人の手に触れられていなかった。
どれを見ても、オレに死者を想う気持ちなんて現れなかった。他人事のように、いや、それ以上になんとも思わなかった。
一緒に教会で祈りを捧げた友達がいた。
一緒に学校で笑い合った友達がいた。
一緒に公園で体を動かした友達がいた。

この胸に沸き上がるのは、全部、どうしてなんとも思わないんだ、という自分を責める声。



「気が狂いそう……」



ずっと先にある水平線をみて自分を見失いそうになるのをなんとか堪える。
歩き出そうと思ったのだが足取りが不安定。
公園のベンチに座って少し休むことにした。
目を閉じて遠くで聴こえる海の音に耳を傾ける。

住宅街に入るだけで、こんなにも簡単に意識を溢してしまう。精神的に自分は弱いのだと自負していたのだが、改めて思い知らされた。



『まるで子供の様だわ。自分のした事の重大さが理解できていないみたい』

「……うるさい」

『図星でしょう?』

「黙れよ」

『ただ逃げ回ることしかできない。あなたが罪を償うには死ぬだけじゃ足りないわ。全く足りない。精々、息ができないくらい苦しんで死ぬべきね』

「黙れ」



目を開けても誰も居ないのに声だけが耳の奥でした。オレがこの島で殺した幼馴染みの声そっくり。
オレを突き刺すような鋭い声で責めたあと、彼女は消えた。
息をはいてオレは大嫌いな空を見上げる。空が広い。
空を見ていると気持ちが悪くなって、またルイトたちを探そうと立ち上がった。
刹那、痛みが左腕を締め付けた。
ぎゅうぎゅうと潰されるような感覚だ。
気を失うほどの激痛ではないが、それでもその場に座り込んでしまう痛み。立ち上がることが不可能なわけではないのだが、立つよりも座っているのが楽だということは明白。
座って痛みを堪えていようと、その場から動かずにいた。
幼馴染み、"呪い"の促進に続いて、今度は見たくもない人物が現れた。オレに綺麗な微笑を見せながら嫌味をこめて「苦しそうね」と声をかけたのだ。