さめた



閃光が目を痛めてつい、まぶたを閉じた。同時に手を引っ張られて体が傾く。倒れないように一歩一歩踏み出していたら手に引っ張られていることに気付かされた。



「走れソラ!」



なんだ、手を引っ張っているのはルイトか。
目がなくてもルイトは耳さえあれば動ける。ルイトの進むさきに魔女やエマがいるはずがない。ジンたちのところへ戻る道を走るはず。
とくに抵抗をしないままオレは目の痛みが引くのを待っていた。良眼能力だから目の回復は早い。ルイトに引っ張られてまだ大して時間は経っていないのに、もうまぶたを開けられる。



(……あ、ルイトの髪)



視界が見えるようになって、まず初めに見えたのはルイトの髪だ。茶色を薄くしたような金髪。さらさらと動いている。



「見えるようになったんなら一人で走れ。手を引きながら走るのは疲れる」

「ああ……、うん」

「?」

「シングはどうしたの? いないけど」



魔女と再び会って、鼓動はまだ速いままだ。冷静であるために冷静のフリをし、ルイトと手を離す。ルイトは空になった手を一度見たが、何事もなかったように走り続けた。あれ、てかあの閃光に対して目が使えるんだ、ルイト。……それもそうか。使うんだからそれなりに対策してるのが当たり前か。



「シングは瞬間移動だろ」

「先に行ったってこと?」

「まあな。ミルミと長い時間離れるとミルミのほうが眠るし」



契約者は色々と大変だな、とルイトがため息混じりに呟いた。









自分の家とも部屋ともいえるアパートの一室にあるドアをあけた。やはりというか、すでにシングはいて、ミルミも近くにいた。ミルミはレイカの血だらけになった肩を治そうと異能を使用している。



「……畳が血だらけじゃん……。レイカは大丈夫なの?」

「ソラか。ああ、まあ大丈夫だ。ミルミが治してくれてるしな」

「レイカが起きないと帰れないし、早く起きないかな。……。……心配だし」



人が死んでもなんとも思わないからオレはレイカが怪我をしていようがどうでもよかった。レイカが親友だと言うのは知ってる。心配なんてしていなかった。ジンにこのことを言ったら激怒するだろう。いつか、オレのクローンに怪我を負わせたときもそうだった。
レイカをみるオレの目を、ルイトが見ている。きっとそこに宿るはずで宿らない感情も知っているだろう。



「……そのことなんですが」



レイカの肩を回復させながらミルミがオレとルイト、シングをみた。