彼の苦悩は?




ルイト・フィリターはいつもオレがいないところで苦しんでいた。
それはオレにバレないようにと意図的に隠れていたり、オレがルイトの目の前から消えてしまったあとであったりする――。



クローンはリャク様率いる大地の組織が造り上げたものだった。当然だがオレと瓜二つ。好き嫌いまで同じ。オレに忠実に造られた分身だった。ただ違うのは記憶。クローンにはミソラ・ヒーレントと名乗らせ、自身がクローンだという事実を伏せた。いくらクローンでも感情が備わっているほどコレはよくできていた。自身がただの道具だとクローンに知られたらコレは情緒不安定になる。

オレが再びルイトの前に現れる前、それは暗殺組織らしい汚れた生活と共にクローンが製造された。

オレの性格が変わった原因は明らかにこのクローンのせいだった。

オレは自分が大嫌いだ。
人が、大切な人をいくら殺してもなんとも思わないオレが大嫌いだ。人を素直に好きになれない自分が大嫌い。大嫌い。大嫌い。大嫌い。
そんな大嫌いな自分がもうひとりいるなんてヘドがでる。気持ち悪い。だが身代わりとしてアレは必要なものだった。でも気持ち悪い。だから性格を、自分を変えることにした。
オレの性格が変わったのはこれだけの理由だ。

やがてオレはルイトの前に再び現れる。まあ、一発でアレが偽物でオレが本物だっていうことはバレたみたいだけど。オレに「お前ソラだろ」と直接言ってきたのはよくおぼえていた。確かにオレはソラと名乗っていたし、その「ソラ」は「ソラ・ヒーレント」のほうだと最初は思っていた。まさか再開して三日も経っていないのに見分けられるだなんて思わない。あの「ソラ」が「ソラ・レランス」……「ミソラ・レランス」の方だと誰が思うだろう。とくに変装をしたわけではないのだから怪しまれるだろうことは予測の範囲内だったが。



「は? 意味わかんない。ソラだけど……。ミソラは女だし、区別くらいでき」「違う」

「……どういうこと?」

「ソラとミソラ、どっちかがあのソラだってことくらい俺やシングたちはわかる」

「……」

「あんなに一緒にいたんだ。それに俺はソラを大切におもっていたし」

「……」

「ソラ、お前は『ソラ・レランス』だ。……死んだと偽ったのか」

「……よく見分けられたね」

「良かった……」

「え?」

「生きてて良かった……ソラ」

「……っ」