革命





あのとき、僕は死んでいなかった。

異常気象、突発的周辺の自然変化は知っていた。当時のオレは罪をしっかり受け止め、死ぬつもりで懐かしいあの空気を再び吸い、土を踏んだのだ。
それなのに僕は生きて帰った。
あの津波が僕に押し寄せる瞬間を見た人ならわかるだろう。海に拐われて戻ってくるはずのない津波だったのだ。
津波の規模は大きくなく、むしろ小さい方だった。だが海に近いところに立っていれば足を掬われてしまうくらいの津波。

海のにおいがツンと僕の鼻をつつき、雨のような滴が頬に触れ、大好きな海の色が視界一杯に広がった。

テレポートの力を使ってももう無意味だというくらい、死の直前にいた。
そんな僕を救ったのはウノ様だった。――その時はウンディーネ様と呼んでいた。
ウノ様が単独でブルネー島を訪れていたのだ。ウノ様の浮遊能力は僕を救いだすのに発揮していた。海の水が僕の体に直撃しようとしたその瞬間、ウノ様は僕の周りに波が来ないようにしたのだ。つまり、海は僕を避けるようにして通り過ぎていった。
呆気にとられた。
僕はウノ様の姿が見えないのに彼の仕業だとすぐにわかった。あのウノ様が「墓参り」を見過ごすわけがないのだ。

そのまま助け出された僕は死んだことになった。
そもそも深青事件のときに戸籍から消えているのだが、それで僕が生きていると言うことを知っている人は激減したのだ。

14歳。

そのとき、「僕」は「オレ」に変わり、性格も社交的な明るい少年から冷めた無表情の少年に印象を変えた。性格が変わったのだ。
14歳の時の僕はただひたすら暗殺組織らしく殺しに励み、"呪い"が生きていることを魔女に知られないようにノーム様……つまりリャク様に協力をしていただいたり。まあ、15歳のときに魔女にはバレてしまったが。
それと同時に解除方法を探したり。
一年半ほどをそうやって過ごした。



15歳の冬。
オレは転入生としてルイトたちの前に再び姿を現す。表社会に姿をさらけ出すのは魔女への挑発だった。
そのときソラ・ヒーレントとしてのオレの隣にいたのは外見がそっくりなミソラ・ヒーレント。オレとは双子の妹という設定で連れてきた魔女、治安組織への身代わり。リャク様が生み出したクローンだ。
このクローンはリャク様の所有物。感情も備わった、人間とあまりかわりのないクローン。
リャク様の所有物ということは可哀想なことに人体実験という苦しい生き方が彼女にまっているのだが、まあ、知ったことではない。
オレの性格が変わったのは紛れもなくこのクローンが原因だ。