出現
「マスター、ここは私に任せてルイトたちのところへ行ってください!! レイカは怪我をしています!」
「バカ言え! ミルミ一人を置いて行けるか!」
「私を信じてください。……大丈夫です」
「いや、ミルミが行け」
「!? しかし」
「命令だ」
レイカの肩から血は溢れんばかりに流れ、彼女自身は気を失っている。シングはシングの背中を無言で見、そして「任せました」と言った。レイカを血の契約にある流血操作で止血すると横抱きにしてその場から立ち去った。
そこは木々が生い茂る薄暗い場所。暗く冷たいトンネルがすぐ目の前にある。トンネルの中は不良のたまり場なのか落書きがしてあった。トンネルを吹き抜ける風はひんやりと氷のような冷たさをシングと、対峙しているその人の足元を通り抜ける。
「話し合いは終わったの?」
「ああ」
「あっそ。それにしてもまさかアンタたちがこの世界にいるなんてねえ? もしかしてあたしたちと同じ?」
「何の話をしているのかわからんな」
黒いセーラー服を着た目の前の少女はエマ。現在シングと対峙している少女だ。そして敵だ。 エマはソラたちと同じ世界の住人だ。なぜこんなところにいるのだろうと疑問を残しながらシングは動き出した。
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「っ見付けた……!」
ルイトが半ば叫んだ。 武器の準備をしていたオレとジンはその手を休め、ルイトにどこにいるのかと聞く。
「場所は知らねえよ。けどここからあまり遠くない。声が響いてるし風があるみたいだし……」
ルイトはまた集中するために喋らなくなった。だがすぐに結論が出たようで背中を向けていたルイトが振り返った。
「植物が周辺に生えたトンネルって近くにないか、ソラ」
「……それならオレがツバサにつかまったトンネルだと思うけど、そこにいるの?」
「いる。シングがエマと戦ってる」
「エマ?」
だれそれ。 記憶にはない人物の名前だ。 思い出したばかりの記憶にも、ない。
戦ってるということは敵なんだろうけど……。
「ああ、魔女の味方だ。エマ・サメント。異能者だ。能力は流血操作」
「ちょ、……は? オレたちと同じ世界の人? なんでこんなところに……」
「それは俺が聞きたい。 ジンはここに残れ。ミルミが怪我をしたらしいレイカを連れてくるみたいだ。……ソラがいくなら俺もいく」
オレが魔女の味方と聞いて行く気になったことを真っ先に察したルイトは弓と矢を持った。
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