守れない約束



一通りを後藤さんと雄平に話した。嘘はついていないが真実を言わないように注意した。
まあ、たとえ言ったとしても能力者だとか異世界なんてありえないから「冗談だろ」って笑い飛ばされるんだろうけどね。



「引っ越しちゃうんだ……」

「今日はこっちに来れそうだったから挨拶しに来たんだよ。勝手にいなくなってごめんなさい。学校にはもう退学届け出したから」



学校の手続きはツバサがやってくれていたらしい。……いつの間に。
でもウノ様から聞いた話によると、オレの保護者はツバサだとか。深青事件で血縁者を全員刺殺、斬殺、撲殺したから未成年のオレに保護者がいなくてツバサが保護者になったんだって。本当はウノ様が引き取る予定だったんだけど、ウノ様には肉体がなくて死人と区別ができないから無理らしい。戸籍はどうなってるんだろう。ついでながら、ツバサはオレだけじゃなく、ルイトやジン、この前会ったシドレ、アイ、ワールたちの保護者もしているらしい。まあ、経済的に余裕があるからかもしれないけどそんなの成人するまでの書類上だけの話だろう。



「もう会えない?」

「え?」

「遠いところなんでしょ?」

「そうだぜ。……そりゃ俺たち、ソラと一年もつるんでねえけど、ちゃんと友達だと思ってるから、……寂しい」

「……」



死んでるかも、なんて言えない。

自分自身のことだからわかる。自分の寿命はもう長くない。リャク様が言ったとおり死期は過ぎているんだ。死ぬはずの人間が生きているということ。いつ死んでもおかしくない。"呪い"によって。魔女によって。



「……どうだろう」



一人ではこちらに来れない。またリャク様に負担をかけられない。まあでもリャク様にとってそんなにリスクは無さそうだけど。
でも簡単に世界は渡るべきではないだろう。



「向こうの都合によるかな」



オレはそうやって濁すしかできなかった。後藤さんの「そっかー」という虚しい声。口を開けては閉じ……ぱくぱくと金魚のように口を動かす後藤さんは何かいうか言わないでおくか悩んでいるように思えた。
それはそうだろう。変ににごしているのだから。



「今日は、これだけだから。他に気にしてる人がいたら引っ越したって言っておいて」

「……うん」

「……。後藤さんと雄平、家まで送ってくよ。次いつ会えるのかわからないしね」

「うん」



会えるわけ、ないのに。
オレは嘘を吐いた。