懺悔




ぽつんと砂浜に僕だけが立つ。

耳を澄ませばきこえてくるのは、低い海の唸る声。

そういえばお姉ちゃんの名前の意味は外国語で「海」だった。
僕の名前もこの島の文化の元となったはるか彼方の言葉の意味で「空」だとか。

物好きな両親だった。

石碑に刻まれた両親の名前を手でなぞる。



「ごめんなさい……。僕のわがままで、みんなを捲き込んで……」



ざわざわと、鳥が木から空へ飛んでいく。

僕は空が大嫌いだ。
たくさんの顔をもつ、自由な空が大嫌い。
まるで同じ名前の"呪い"に縛られて生きる僕に自由を見せ付けてる様だから。

水平線が白い。

津波がブルネー島を襲うまであと少し。

さようなら、世界。

いっぱい嘘を吐いた。

いっぱい殺した。

未来は明るい。

たくさんの可能性を秘めている。

そんな夢物語、もう聞き飽きた。

ほら、世界はこんなにも真っ黒。

妖刀を握り締める。



「これでレランスの血が途絶えるのか……。ブルネー島は信仰を完全に失って、沈む」



そういえば僕は津波で、ここで死んだら死体はどこにいくのかな。

たぶんウンディーネ様が回収に来てくれると思うけど。

そのまえにサメに食べられたりして。


そんな事を考えてたらもう津波は目の前。

石碑に手を添える。

死ぬ前に大切な人の顔が浮かぶ、とか時間が遅くなったように感じる、とかあるけど。

……事実みたい。


潮風が僕の頭を撫でた気がした。



「ばいばい」



石碑の感触を手で確かめた。

水の音がうるさい。

ほら、津波がもう砂浜に乗り上げようとしている。

遠くで誰かが僕を呼んだ気がした。

振り向かず、大嫌いな空見上げる。

視界に潜り込むのは水。

そして僕は水に喰われて沈んだ。