手を離した





唐突だが、僕は何度も死にかけたことがある。

それは戦闘訓練だったり、殺し合いだったり。
僕を保護してくれた水の組織は暗殺をして食べていく組織だったから、人を殺す術を身につけるためだ。だから、そうなるのは当たり前だったのかもしれない。
だが、死にそうになるほど僕は死ぬのが怖くなった。死にたくなかった。しかし僕に刻まれた"呪い"はたしかに僕を殺すものだった。

とにかく、僕は生きたいと強く願った。

13歳までの僕は"呪い"の解除方法を探したり、強くなるために努力した。
その間に数回、僕に"呪い"をかけた張本人である魔女に会った。魔女は会う度「まだ生きてるの?」と言う。僕が殺そうとしても、魔女に返り討ちにされるばかりだったが、それでも魔女を殺して"呪い"を解除しようと必死だった。
寿命を、情報系を仕事にする炎の組織や研究をしている大地の組織に手伝ってもらいながら無理矢理引き延ばしたり。最低限の普通の生活を送れるようになった13歳の僕は学校に入学できるようになった。

いままでの努力が結果に出たのか、飛び級だった。いっきに上のクラスへ最年少記録を出して入った。
そのとき出会ったのが、今の君――オレとも仲良くしてるルイト、シング、ミルミ、ジン、レイカだよ。
彼らとは夏までだった。
夏まで時間を共有したが、やっぱり僕は裏の人間。夜な夜な人を殺しに出掛けたり、島民を皆殺しにする深青事件を起こした人間だ。僕が「僕」として一緒に過ごせたのは夏まで。

13歳の夏。

それは僕にとって大きな節目だった。

僕が素直に笑顔を浮かべられたのはここまで。


夏は暑かった。
蝉が鳴り止まない日中。
教室のひんやりとしたクーラーが涼しくて。
温度計の数字を見て脱力したり。
だらだらと過した。
何度か僕も危ない目に遇ったけど、それを埋め尽くすくらいルイトたちといるのは楽しかった。
――夏休みという長期休校の前。

ルイトは記憶喪失だった事実を知った。
ルイトが記憶を取り戻し始めたことを知った。
取り戻すきっかけを作ったのは紛れもない。――僕だ。

ルイトはブルネー島で起きた深青事件について調べだした。
なぜならルイトの記憶は深青事件から思い出したから。
ルイトがその深青事件から思い出した理由は僕だ。

……僕なんだ。





















その夏。
夏の長期休校の前。
僕は死んだ。