語れない真実、語れる嘘



近くの公園で雄平と集合することになった。
後藤さんの長い三つ編みにした髪は踊るように跳ねて、つい手を伸ばしたくなる。

雄平より先に誰もいない公園についたみたいだ。オレたちはベンチに座って待つことになった。
オレがいなくなったときとは違う、寒さに混じったほのかな暖かさ。冬は過ぎようとしているのか。どうやら時間の流れはあちらと違うらしい。



「おい後藤ー、ソラがいるって……。……マジみたいだな」

「悪かったね」



だて眼鏡はまだ外してなかったのか。
からっぽの公園の奥から駆けてきた馴染みのある姿にまた懐かしいと胸の奥が暖かくなった。
雄平らしい活発な服装に、頭が良さそうに見えるから、という理由で装着しているだて眼鏡。声。全部が記憶に一致した。



「いやいや、冗談だって。怒るなよソラ」

「べつに怒ってないんだけど。まあ、久しぶり」

「ああ。久しぶり」



よく一緒に馬鹿をした雄平が、懐かしい。後藤さんも雄平も。ついこの間まで毎日一緒にいたのに。
でももう一緒にいられない。オレは異能者。この世界にいるはずのない存在だった。たしかに思いだしつつある記憶は模造品でも偽物でもない。後藤さんたちと同じように、あっちにも仲間がいるんだ。



「雄平が来たよ。ソラ、話って?」



後藤さんはいつもそうだ。明るい声で、なんとでもないように話すのに目は覚悟を決めたそれだ。雄平も、どんな言葉が来てもいいように覚悟決めているらしく、拳はずっと固い。



「嘘は、つきたくない。嘘を言えって言われてるけど、後藤さんたちには本当のことを言いたい。……けれどそれはダメだから、全部は話さない」



――中途半端。

あいつに嘘つきと言われたのを気にしているのだろうか、オレは。

……あいつ?



「うん」

「わかった」



案外、後藤さんと雄平は受け入れてくれた。嫌な顔なんてない。
こんなに快く頷いてくれるなんて思わなかったから正直驚く。



「オレ、行方不明になってたんだよね」

「うん」

「いままで何をしていたのかっていうと……。なんて言えばいいかな。こっちに来る前に暮らしていた場所に行ってた。それを伝えに行けなかったのは、突然だったから」



嘘はついていない。
でも話せない。



『あら、言い訳?見苦しいわよ』



赤髪の少女の声がした。でもそれは一瞬。周りを見ても殺風景な公園しかない。
赤髪の少女――。名前はラリス。オレがまだ自分のことを「私」と呼んでいた、ブルネー島に暮らしていた頃にいたオレの親友。オレがたしかにこの手で斬った少女だ。
なぜ死んだ彼女の声が、姿がオレに届くのか。それは少し前から疑問に思っていたが、なぜ世界を跨いだこの場所までついてくるのだろう。