エピローグ



帰路を進むバスの中でオレはぼんやりと呪いのことを考えていた。左腕までしかなかった刻印が静かに痛みもなくゆっくりと鎖骨まで広がっていた。今や手のひらも刻印で黒くなっている。

痛みはなくても進行してしまう場合があるのか。それとも、本来はここまで刻印が広がっていて今まで無理矢理に閉じ込めていたのか。呪いの刻印はもとの規模に戻っただけなのだろうか。だとすると、オレのいまはまだ青色の瞳がいつか真っ赤に染まるのかもしれない。
いつしか左目だけだったそれが両目に広がり、そして身体中に呪いの刻印が……。シングみたいに……。

幻も見えてしまう。いや、見えている。殺したはずのラリスの姿が、足音が、視線が、声が。
オレの呪いの進行状況はオレが思っているよりも実は深刻なのではないだろうか。

いつ死んでしまうのだろう。

本当に魔女を殺せるのだろうか。

魔女を殺せるまで生きていられるのだろうか。

姉を、今度こそ……。