待ち人きたれり


シャトナとレオは日付がすでに変わった午前の廊下を走り抜けた。最上階に近い上層部ではすれ違う人もいるわけがなく、快調に進んでいく。エレベーターの前に立つとすぐにシャトナが「ケケケ」と笑う影を操ってドアを開け、エレベーターを操る。

ここの組織では異能の強化や体力向上を目標に、エレベーターはボタンひとつで作用しないようになっている。緊急時のため、来客用のための電気が通ったエレベーターはあるが、それは上層部まで繋がっていない。

シャトナは影で重たい箱を操作して、二人はそれに乗り込み、一階まで降りた。
外部から仕事でやってくる幾人の来客に軽く挨拶をして二人はロビーについた。目的の人物はいない。
ゆらゆらと揺れるシャトナの影がまた「ケケッ」と笑う。



「あの」



レオが受付まで行って受付嬢に話し掛けた。シャトナも一歩遅れてレオのあとについていく。



「暗殺部のレオ・コヒュウメです。帰宅の確認をしたいのですがよろしいですか?」

「はい、確認します。どうぞ」

「ソラ・ヒーレント、ルイト・フィリター、ジン・セラメントレ、レイカ・サメロン。以上四人です」

「少々お待ちください」



受付嬢は基本的に諜報部の人間だ。彼女はすぐにパソコンのキーボードを叩いた。そしてすぐに結果がでる。



「まだ帰宅されていません」

「そうですか……」

「しかしルイト・フィリターからすでにバスに乗ってこちらに向かっていると連絡が入っています。もうすぐ到着されると思いますよ」

「ありがとうございます」



シャトナとレオはロビーのソファに座って四人を――ソラを待つことにした。




「今回の集会は長かったわね。一日かけてたじゃない」

「ウノ様とカノン様との間にある亀裂が深くなったからな……。今回の集会でリャク様が仲介に入って二人を落ち着かせたとは考えにくいし……」

「どうなったのかしらね……。この組織ももうこの状態が維持できるとは思えないわ。それにしても、ナイトに言われて急いでソラを迎えに来たのにソラ、まだ帰ってないの? 焦らすわね」

「焦らしてるのかどうかはさておき、一泊二日の旅行にそもそも無理があったな。けどあいつらは友達がいっきに二人も死んだから……」

「そうね……。って、あんまり暗い話をしないで明るい話題にしましょうよ! テンションが下がるわ!!」



シャトナは昨日見たテレビの話や読んだ本の話をする。雑談をして数時間がたち、午前から午後になったころ、ようやく待ち人がやってきた。